★ The Tsuchinoko News 2 (つちのこ通信2) ★

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【映画】ふうけもん

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「われら青春!」「夜逃げ屋本舗」でおなじみの中村雅俊主演、「釣りバカ日誌」の栗山富夫監督の人間ドラマ作品である。2009年に東映系で全国公開を予定されていたが直前になって”お蔵入り”。2014年に自主上映の形で全国巡回上映が開始され、現在も巡回中である。

”元祖便利屋”の右近勝吉氏をモデルに、実話を題材にしたドラマで、”家族”、”仲間”、”こころあたたかい感動を”と、いかにもハートフルなファミリー映画であるような宣伝もなされ、筆者は「なぜ松竹系ではないのか」と思ったりもしていた(笑)どういういきさつなのか、本作は伝道映画であるとクリスチャンを中心とした上映会になっていて筆者もクリスチャンなので(ついでに映画マニアなので(笑))昨日、石川県上映会に足を運んできた。

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ふうけもん(佐賀弁で”バカ者”)と呼ばれる江頭右京。若かりし頃、母が急逝したが、その時”会社が潰れるかどうかの瀬戸際だ”と家にいなかった父親に反発、グレにグレて真壁組というヤクザの息子と友達になり、ついには真壁組の組員となってしまう。

もともとケンカに強く、暴力的だった右京は、次第に頭角を現す。ある日、真壁組の金融事業の高利貸しの取り立てで、とある民家に押し入った右京。生活に困窮する家だったが、なけなしの生活費をも取り立てる。その後、その家族は一家心中。幼い少年だけが生き残る。

右京は、やるせなさからか、自分の母が死んだことからか、ともかく自暴自棄になり、一生兄弟の約束を交わした真壁の息子を殴って、つきはなすほどに情緒不安定になっていく。そんなとき、町で偶然出会った、牧師の話を聞き、キリスト教会へ足を運ぶ右京。なぜか、くっついてくる真壁の息子。

「死んでしまったものは仕方がない。自分は許されないことをしてしまった。もう死んでしまったものはどうしようもない」そう語る右京に、「そんなことはない」と告げる牧師。後日、右京は、一家心中で生き残った少年に会い、なんども土下座をして「ゆるしてください!なんでもしますから、どうかゆるしてください!ごめんなさい!」と謝罪、赦しを乞うのだった。

しばらくして右京は、真壁組から離れ、元祖便利屋稼業へと転身していく。

服役している父の代わりのお父さん役、死体の片付け、”息子を殺して下さい”との依頼を断ったところ、その殺されかけた息子が従業員として就職してきたり、一筋縄ではいかない便利屋稼業。さらには、愛する妻の母親との確執、愛する娘の家出。さまざまなトラブルを通して、かつて右京がそうだったように「許さない!」と憤り、怒り、憎しみ、と蔑んできた相手に「ごめんなさい」と赦しを乞い、関係は少しづつ氷解、便利屋として、そして何よりもクリスチャンとして「赦し」を大切にする右京だった。右京自身も、かつて逃げ出すように飛び出した実家の父との確執を「なかなか許せない自分の心」と戦い、どうにか解決の糸口を見つけたようだ。

そして、右京の運命を変えた牧師と、真壁の家を飛び出してしまった一生兄弟の息子。彼らはアラスカにいた。牧師はそのまま昇天したようだが、真壁の息子は、そのままアラスカに。

右京は一念発起、真壁の組長、すなわち父から預かった「へそのお」を携え、アラスカに向かうのだった。

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作品は演出として時系列が変更してあり「思い出」として描かれているが、おおよそ上記のような内容である。

たしかに、うたいもんくとしての「家族」「仲間」なのではあるが、それ以上に「赦し」を強調した作品になっていて、主人公の元祖便利屋は便利屋というよりは「赦し屋」といった様相。憎しみ、憤り、怒りを便利に解決していく便利屋。そんな感じだ。牧師・教会・聖書、そうしたものが出てくることには出てくるし、右京(さらには真壁の息子)の人生に大きく関わってはいるが、あえてクローズアップしていないのに、主題が「赦し」とは・・・・そのためなのか、演出上、激しいバイオレンス、死体、ごろごろ出てくる(笑)

とくに主人公・右京の転機となったくだりでは、筆者も思わず涙腺がゆるんでしまうほどの名演出で、ふと「誰じゃ!こんな重い重い脚本書いたやつは!」と思ったら、監督氏であった。

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どちらかというとハートフルコメディ、何にもしないで社長と友達、ラクして既得権益といった内容の(すみません!ファンに怒られるかも!)の人情喜劇”釣りバカ”の監督さんだったので、というと、これまたさらに怒られるが、ナメてしまっていたが、これは、すごい作品だ。そういう意味では、一般的に評価が高くはならないだろう。

なぜなら、とくに日本人は「自分は正しい。常に正しい方にいる。自分は神、自分自分」と、常に自己中心的で、「自分以外」への差別=それは大変申し訳ないが、クリスチャンでさえ、クリスチャンと未信者と区別し差別し蔑むのを、よく見かける、さらには「だから」と、自分が裁き、あいつは悪だ、許しちゃおけないと、憤り、憤慨し、事態を解決しないまま「自分こそ正しい」というポジションをキープしようとするところがある。

それを、あからさまに描き「許せ」とは。

もちろん「許す」ことによって、事態は激変し、刹那的ではあるが自分のポジションも変わるのであるが、それをまた「許せない」自分がいたりして。

結局のところ、悪人は自分なのである。

こうした葛藤を描くとは、栗山富夫監督のスゴミを感じる作品に、正直いって、おそれいった。

さらには、日本の著名俳優の使い捨て(笑)にも驚異を感じた。

ポスターにもなっており、主人公右京の親友(気がつくと、牧師とともにアラスカにいってしまった極道の息子という、すごい役どころ)を演じる哀川翔

最初、中村雅俊哀川翔のからみが想像できなかったのだが、なるほど、元極道で改心し、まろやか~になった男:中村雅俊と、兄弟同様の親友の極道の息子なら確かに哀川翔で、しっくりとくる。

その哀川翔は特別出演ではあるが、ぜんぜん出てこない。ポスターの真ん中にいるのに(笑)出てきたのは、ラスト1分である。

他にも大御所と呼ばれる俳優さんが、わんさか出てくるが、どれもこれも10分も出てこない(笑)この脇役のような使い捨て感覚は、ぜいたく以外のなんだというのだろうか(笑)筆者的には、かなりショックが大きかった。

竹中直人も1分、藤村俊二笹野高史も2~3分、竹脇無我も1分、中村玉緒は10分くらいかなー。

結局、おおよそ2時間、まったく目を離すことができず、最後まで楽しめ、そして(筆者個人として)まいったなー、重いなー、考え込んでしまう桂作であったりした。

来年の1月初頭まで全国行脚で公開される本作「ふうけもん」。ご近所のキリスト教会に行けばチケットは入手できると思われる。詳しい公開予定は こちら。


映画『ふうけもん』オフィシャルサイトはこちら↑

予告編はこちら↓


映画『ふうけもん』予告編 2014年9月1日全国順次上映スタート - YouTube

予告編のハートフルな印象とは異なりますので、好きな人は必見!たぶん本公開を見逃すと二度と見られないと思う状況下なので、なおさら必見!