【映画】タイム・マシン(80万年後の世界へ)
「SFの父」と呼ばれる H・G・ウェルズの古典SF小説「タイム・マシン」の1960年公開作品である。
タイムマシンといえば時間を超越し、さまざまな時代に移動できる機械・乗り物で、ドラえもんにも登場し、バック・トゥ・ザ・フューチャーにも登場し、スタートレックでもエンタープライズ号がそのまま時代をさかのぼる描写があるなど、SFではおなじみのガジェットだが、本作のタイムマシンは、文字通り「時間のみを移動する」だけで場所は移動できないタイムマシンである。
発明家であるジョージは、過去と未来を自由に往来できるタイムマシンを発明した。ジョージは未来へ未来へと旅立ち、ついには80万年後の未来に到達する。そこは、緑あふれる楽園のような世界で、知識を捨て、冒険を捨てた無気力なイーロイという人種に出会う。ジョージは、イーロイの少女ウィーナと親しくなる。しかし、ウィーナは、もう一つの人種モーロックに連れ去れる。モーロックらは地底に住み、イーロイを支配、食料としていたのだ。ジョージは、ウィーナを助けるべく地底に潜入する。
80万年後とかなり大風呂敷を広げた設定に、場所は移動できないタイムマシン。それを発明したジョージの冒険活劇で、古典で古い映像、古いVFX(特撮)だが、ずいぶんと楽しめる作品だ。
それにしても、遠い未来は、なぜイーロイとモーロックに分裂し、しかもモーロックがイーロイを食料として支配・家畜化しているのか、なぞすぎると思っていたら、実は、このイーロイとモーロック。社会活動家としての顔もあるH・G・ウェルズの「資本社会」像で、イーロイは資本家、モーロックは労働者を表しているそうな。
資本家は、なにもせず気楽に暮らしており、未来には無気力で幼稚なイーロイになってしまう。労働者は、暗い場所で働きずめで、やがては地底人モーロックとなり、イーロイを家畜にして食べてしまう。さしずめ資本社会にいける労働者層の反逆といったところか。原作小説では、主人公に「80万年後に見た世界は、資本主義における階級構造の結果だ」と語らせていたりもする。
冷戦がおわった現在では、資本主義の階級構造というよりも社会主義の階級構造のような気もするが(どちらも同じようなものではないかと思ったりもするが)そういう意味でいえば、これもサイバーパンクの一種なのかも知れない。
2002年には、さらにリメイク。
ガイ・ピアースとジェレミー・アイアンズの主演でも製作されている。
本作も2002年作も、原作小説からすると、相当アレンジされているが、映画は映画。原作にこだわることなく楽しむものだと、筆者は思ったりもする。
The Time Machine (1960) Trailer - YouTube