【映画】ゾンゲリア
サンゲリアではなくゾンゲリア。80年代の粗製濫造気味イタリア・ゾンビ映画ではなく粗製濫造気味の米国ゾンビ作品である。「ゾンビ作品」とは言っても、表だってゾンビが襲っては来ない。物語の最後になって、ああこれは「ゾンビ」だったんだ、というオチが待っているサスペンス調のホラー映画だ。
海辺で色気だった女性が男を誘う。男は下心をもって女性をカメラでパシャパシャと撮影。すると地元の人々が現れて、男は激しく暴行を受けたあとガソリンをかけられ火をつけられる。炎につつまれ絶叫する男を、カメラで撮影する地元の人々。男は焼け死んだ。
最近急増している不審な連続殺人事件を捜査する主人公のシェリフ・ダンは、遺体処理の専門家ドッブスに死亡した経緯を尋ねるが埒があかない。目撃者も発見されず捜査も行き詰まる。
ある日、ダンが車で走っていると、突然飛び出してきた男を撥ねてしまった。しかし撥ねられた男はすぐに立ち上がって去ってしまう。車と接触した際に、男のものであろう肉片を見つけるダン。すぐさま専門医に調査を依頼するが、この肉片は死んでずいぶん経っていることが判明する。専門医はダンに急ぎ知らせようとするが、大勢の地元の人々が現れ、強酸を鼻に突っ込まれ顔面が溶けて即死。
ダンの愛する妻ジャネットも、子供達に教えるのだとブードゥー教の魔術書を持ち出すなど奇行が目立つ。
すべての謎は、遺体処理の男ドッブスが鍵だった。すべての真実が今明らかにされようとしている。
古い作品なのでネタバレしても問題ないだろう。実は、この町の人々はダンも含めて全てが死体。遺体処理の男ドッブスが、死んだ人間に化粧をほどこし、傷を修復し、そしてブードゥーの魔術でゾンビとして蘇らせていたのだ。
そして、この黒魔術・黒科学に陶酔したドッブスは、蘇らせたゾンビを使って、新たな殺人事件を起こし、その死体をゾンビ化し、と、町中すべてをゾンビにしていたのだった。
エイリアンなどで名を馳せたダン・オバノンの脚本が「最後の謎解き」「怒濤のどんでん返し」を用意しているので、表だったゾンビが出てこないのに、ずいぶんと楽しめる。
また、冒頭の人間焼き肉、注射器で目をプスっと刺す、強酸で顔面を溶かすなど、イタリアン・ジャーロを彷彿させるような凶悪な残虐シーンが、なんと米国映画で見ることができるとは、と、当時は大変驚いた。というより、つい最近まで、本作はイタリア映画だと思っていた(笑)
それにしても映画のポスターもいただけない。せっかくのダン・オバノンの最後になって初めてわかるオチが、堂々と書いてある(笑)