【映画】SF/ボディ・スナッチャー
盗まれた町のリメイク第一弾。盗まれた町は何度もリメイクされているが、筆者的には、やはりこのリメイク第一弾が最もしっくりとくる。リメイクされるたびに地区や人名などが異なるが話の筋は次のとおり。
とある町で、宇宙からやってきた謎の生物によって、町の人たちが次々と身体を乗っ取られていく。姿・形はまるで同じなのに、別人となってしまう。気がつくと、ほとんどすべての町の人は、謎の生物に乗っ取られ、わずかな、まだ乗っ取られていない人たちが町から脱出しようとする。
基本的には宇宙からやってきた正体不明の侵略者が人間を乗っ取るというSFであり、ホラーである。似た状況のものとして「遊星からの物体X」が挙げられると思うが、あちらが限られた空間の中で、たがいに疑心暗鬼となる人間ドラマを描いているのに比べ、こちらは、正体不明の侵略者に音もなく(あるけど)どんどん侵略されていく恐怖そのものを描いている。
監督はフィリップ・カウフマン。主演はドナルド・サザーランド。キーファーのお父さん。この方の迫真の演技がとくに本作を重厚なものにしている。キーとなる精神病理学者にレナード・ニモイが扮し重要な役所を、科学技術将校スポックのごとく演じ、深みを出しているのも魅力だ。
特撮面では、物体Xのような派手で奇怪なものが登場するわけではない。あやしい人間のマユのようなものが登場し、あやしい透明の宇宙生物らしきものが登場するが、本作はあくまでも、俳優の演技そのもの、ストーリーそのものが、”うそのようだが、真実であるかのように、恐怖をあおって”いる。そういう意味で秀作だ。
時代のせいか、このあとのリメイクは、どうしても派手なVFXに偏りがちでストーリーそのものの丁寧さ、俳優の演技の重要さ、そうした”映画らしさ”が抜けおちてしまっているような気もする。
真夜中に、寝てしまったら、おしまいだ。
見えない謎の生物に身体を乗っ取られ、自分自身は消滅する。
その恐怖をしっかり描けているのは、唯一、このリメイク版のみ。
なぜか邦題は「SF」と冠がついているが、なんなんだろう。意味不明だ。
ぜんぜん関係ないが、本作のイメージソングを細野晴臣が「SFX」というLPレコード(懐)で発表している。このころは、VFXではなく、SFX(特撮)だったのだ。