【映画】ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド(のリメイク)
13日の金曜日であたりを血まみれにし、ゾンビで人肉食を映像化し、とびちる血しぶき、徹底した人体破壊の「特殊メイク」ばかりして著名なトム・サヴィーニ師匠が自らメガホンをとって撮影したのは、モダン・ゾンビの記念すべき第一作「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」のリメイクであった。その名も「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド/死霊創世記」。
しかも脚本はジョージ・A・ロメロというのだから見ない手はない。
作品は前作の「モノクロ」ではなく総天然色「カラー」。
「ゾンビ」もカラーだったが、血の気のひくようなコントラストだったが、本作のカラーは、威勢が良く元気のよい「カラー」で、どうも恐怖感が物足りない。
基本的には前作を限りなく踏襲していて、田舎町で突然よみがえった死体に襲われ逃げてるうちに郊外の一軒家にたどりつき、迫力たっぷりのリーダー然としたアフロアメリカンに、ぐうたらで無責任なクーパー夫婦とゾンビに噛まれた娘、そしてバーバラと、登場人物も話しもほとんど同じ。
しかし、弱い女性で最初から最後までぎゃーぎゃー言ってたバーバラはここにはいない。凜として、途中からスカートを脱ぎ捨て銃をぶっぱなしゾンビの脳天に銃弾を撃ち込むウーマン・リブなバーバラが立っている。
もちろん、そんなことだから、前作で主人公だったアフロアメリカンの兄さんは、ケンカ腰で他人に命令しふりまわし何かにつけては口げんかばかりする輩に成り下がってしまっている。
ゾンビに取り囲まれ、内戦をしつつも、窓に扉を釘で打ち付け防戦し、車やガソリン給油機の鍵で脱出を試みたりと、そのあたりは一緒なのだが、主人公がバーバラになってしまい、ずいぶんと雰囲気が変わってしまった。
前作を見た方は、そのラストの ロメロテイストなダークな終わり方で、作品全体の質が高くなったと感じていらっしゃることであろうが(筆者もそうだ)、本作では、バーバラが バイオハザードのように活躍してしまい最後にはなんと生き残ってしまうという始末で、(当時の)「現代風」なアクション作品に成り下がってしまったのは何とも残念なことであった。
トム・サヴィーニ師匠の非常に丁寧な実に細かい演出には脱帽するが、消費者がポップコーンを食べて見る、使い捨ての作品になってしまったのは、非常に哀しい限りだ。マニアが喜びそうな小細工は多く(まんま、ものまね)スプラッターさえあればいい方には満足かも知れないが、Dawn Day Land と続く人類滅亡の筋書きからは、これではいかんだろう、の一言。
ホラーでは、人類が格好よくてはならないのだ(笑)