【映画】ポゼッション
エキセントリックな男優としてはゲイリー・オールドマン(最近は主人公の脇をかためるイイ人が多いけど)があげられる。エキセントリックな女優はというと筆者は80年代大活躍だったイザベル・アジャーニをあげる。イタリアの女優で、精神的に崩壊寸前とか崩壊していくとかを超越し、最初からキレまくり(笑)最後まで精神崩壊したまんまという印象がある。
イザベル・アジャーニをはじめてみたのは、よくわからない系のホラー「ポゼッション」であった。
妻アンナがハインリッヒという男と浮気をしているのを知ったマルクは、妻の浮気の現場をおさえようと妻を尾行する。しかし、そこで発見したものはハインリッヒとの浮気どころか、彼女自身が産みだした”魔物”だった。
彼女の欲情的な妄想が、どろどろぐちょぐちょの意味不明な”魔物”として実体化していたのだ。アンナは”魔物”を育て”完成形”へと導くため、次々と男を誘い殺害しては”魔物”のエサとして与えていたのだ。
ストーリーとしては「夫婦仲が悪くなり次第に狂気にとりつかれていく妻」とガイドされていることが多いように思うが、そんなことはない。イザベル・アジャーニ演じるアンナは最初から何かおかしい。そして、やってることもおかしければ、最後までずっとおかしい(笑)なかでも真夜中の地下道(地下道なのかよくわからないが)で、嘔吐しつづけるアンナの長いショットは秀逸で、ここまで気の触れた演技ができる女優は今も少ないだろう。終始、どこを見ているのかはっきりしない視線もまた、そのエキセントリックさをパワーアップしている。
それが要因かはわからないが本作の演技でカンヌの主演女優賞を受賞する。
作品全体としては、ホラーだから、かまわないのかも知れないが、終始よくわからない。序盤の方は、たしかに「おまえ浮気してるだろ」「あなたがどうしても嫌い!」という夫婦の破綻劇の様相だが、途中からは、わけがわからない。そして最後、”魔物”の完成形が、その”嫌いな”男の姿形をしていて、さあビックリなのはわかるが、夫婦ともども死ぬというのも理解不能だ(笑)
80年代といえば耽美主義的な意味不明の作品も多かったが、これも、その一つに入ると思われる。
美形で変わった女優だと思っていたら、その後、セルフ・プロデュースでカミーユ・クローデルを熱演、これまた、彫刻家ロダンの愛弟子で、精神的に破綻、精神病院でその生涯を終える実在の人物カミーユ・クローデルを熱演。すっかり気のふれた演技といえばイザベル・アジャーニという強い印象を残したりしていた。
ちなみに(ちなみに、と、どうでもいいことかのように言ってしまって申し訳ないのだが)本作ポゼッションの主演男優の方は、サム・ニール。オーメン最終作でダミアンをやってた方である。よくよく考えると、非常に濃い主演二人組の作品だ。
見所は、やっぱり、イザベル・アジャーニの嘔吐かな~(笑)
つい先頃同じタイトルのサムライミ制作作品があるが、この作品とはとくに関係はない。