★ The Tsuchinoko News 2 (つちのこ通信2) ★

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【映画】感染列島

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鳥インフルエンザが発生し、近隣周辺では”風邪のような症状”が蔓延、新型インフルエンザの発生が疑われた。しかし吐血し死亡したりタミフルが全く効かなかったり、鳥インフルエンザの発生源である鶏舎では全く感染した人間がいないなど、新型インフルエンザではない別の何かであることが次第に明らかになってくる。別の何かは、かつて人類が遭遇したことのない未知のウイルス。ワクチンも有効な手立てもなく、人々は次々と感染、死に至った。ゴーストタウンと化した街で、不安と狂気、騒乱が席巻する中、凜として立ち上がる医師がいた。

アウトブレイクコンテイジョンを模した「感染パンデミックもの」の日本作品である。

とはいえ、そこは日本作品。美男・美女の恋愛沙汰(妻夫木聡と壇れい)に、お涙ちょうだい、大風呂敷を広げすぎの小松左京的世界観の演出にと、枚挙にいとまがないほど突っ込み所満載のメロドラマに終始しており、駄作となっている。

物語の序盤、インフルエンザらしき患者を治療する医療現場で、ベテラン医師の佐藤浩市が活躍、しかし彼も感染し死亡する、のあたりまでは、なかなか見ごたえがあったのだが、その後からが脚本から演出まで何もかもがひどすぎる。

事態の調査と解決のためWHOから派遣されたという壇れい。実は主人公の若き医師妻夫木聡とは恋愛関係にあったという設定。キレもののはずの壇れいは、終始上から目線の態度をしていながらも「それは何か、何をするのか、どこから来たのか、どうやって殺すか」とありきたりで曖昧なことを深刻そうに語るだけで、これといって何かするわけでもない。

結局、事態の収拾に活躍したのは、無名のウイルス研究者であるカンニング竹山だけだ。なぜ彼が端役で、ほんのちょっとしか画面に出てこないかはなぞ。これでは、どうあがいても事態を収拾できるはずもないから登場させたご都合主義のトリックスターでしかなく、脚本の穴だ。

感染者の描き方も疑問だ。暴れる。非難する。激しく吐血する。体力など奪われていないのではないか。ウイルスの発生源である離島の患者が襲ってくる様は、これではゾンビだ。

ゴーストタウンと化した街の描写も、車が横転しまくり、自衛隊の戦車とおぼしき車体が出てくるなど、鳥インフルエンザが疑われる流行風邪で、なにゆえここまで暴動の跡があるのか、もうわけがわからない。

唯一秀逸な演出だったのは、鶏舎の経営者・光石研が「鳥インフルの発生源だから」と”おまえのせいだ”と言われ、すみません、すみませんと謝罪しながら首をつるところだけだ。それでも、苦情の電話が1本だけで、すぐに電話線を抜いてしまう光石研の演出で、重大さが伝わらず、気の弱いおじさんが自殺したくらいで流れてしまい非常に残念。ここは、じゃんじゃん鳴り続ける電話と、日本人の他人のせいになすりつける醜悪さを徹底して描き、故に自殺する(つまり同胞に殺害される)演出は必須だろう。

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そして衝撃のラストは、命がけの荒療治で、檀れいは死ぬ。絶叫する妻夫木聡。そこまでやっているのに、事態の収拾はカンニング竹山のワクチン。

これでは、患者の命を救おうとしている使命感みなぎる医師たちではなく、ルーチンワークの中で恋愛沙汰に奔走する一般労働者だ。その一般労働者は何事もなかったように辺境地の診療所での診察にいそしむ。この主人公が成長した部分も何にもなし。

はじめからこういう人で、最後もこういう人。

なんだこれは。

パンデミックを描いているはずなのに、パンデミックになることなく、誰が成長するわけでもなく(事態から学ぶこともなく)今のままでいいんだ、最初から善人で今も善人。そんな日本感が偽善に満ちている駄作でありました。


感染列島 trailer - YouTube