★ The Tsuchinoko News 2 (つちのこ通信2) ★

重要な話から、どうでもいいことまで。ほとんど役に立たないことを書き連ねています。

【映画】トロン・レガシー

f:id:tsuchinoko118:20110921030702j:image:left:w220前作「TRON」が公開された1980年代からおよそ30年経過しようとしていた2009年あたりから、ディズニーのサイトで「VFX CONCEPT TEST」と称して、TRONのようなものの予告編(Trailer)風映像が公開されはじめていた。CG全盛の昨今の映画事情にあって、何度か「TRON」のリメイク話は耳にしていたものの、あまりに突然でかつ、今までに知っていた「TRON」とはまるで別物で、しかも、老齢のケビン・フリン(ジェフ・ブリッジス)が登場していたりして、これはいったいどうしたことか、まさか本当に新作として続編を製作するのかと驚かされた。
2010年になり、ほんとうに「続編」として新作が公開されるという。タイトルは「トロン・レガシー」。トロンの遺産。これまた意味深な。

I-MAXだったり3Dだったりと、コケ脅し的な映像の洪水で、興行的にはヒットしたようだが、なにしろ筆者は目があまりよろしくないので、正直言って、その価値観はよくわからなかった。

作品TRON LEGACYの方も、ちょっと煮詰め方が足りない、というのが正直な感想。TRONの世界観は、人間世界に対して、コンピューター内=いまふうにいえばバーチャル電脳空間があり、そこに動く「プログラム(ソフトウェア)」を擬人化し、電子の世界として描いたもの、である。
擬人化されたプログラムがウロウロし、ユーザーの決めた権限によって、創造主と人間、の関係のように、「ユーザー(人間)」と「プログラム」の関係として描かれる。

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1作目では、マスター・コントロール・プログラム(MCP)というプログラムが、反乱を起こし自分をも消し去る能力のあるユーザーである「フリン」が、電子世界に、ひきづりこまれそこに登場する「トロン」プログラムとともに、このMCPを破壊する。
トロンは、ユーザーの味方、というわけだ。
正義のゲーム戦士:トロンの活躍を描くから 「TRON」なのだ。

ところが、今回の TRON LEGACY では、な、な、な、なんと トロンがいっこうに出てこない。トロンが出てこないのに、トロン:レガシー これいかに。(実は、こっそり出ているのですが(笑))
 
登場するのは、前作の主人公ユーザー「フリン」、その息子「サム」、前作では MCP の閉鎖ドライブをハッキングしていた フリン製のプログラム「クルー」そして物語のキーとなる 女性の形をしたプログラム「クオラ」前作の「トロン」プログラムを作った アランも出てくるには出てくるが 冒頭、じいさんとして出てくるだけだ。
物語は、天才ハッカーであり前作の主人公であったユーザー(人間)「フリン」が突然失踪するところから始まる。そして20年後。

息子のサムは、27歳となり、ある日、アランから「フリンに託されたポケベルが鳴った」といわれ、”電子世界”に飛び込む。
いきなり「迷子プログラム」扱いをうけ、「ゲーム・グリッド」にたたき込まれる「サム」。そこで持ち前の勘と運動神経で、次々とゲーム戦士を破壊、勝利していく。
しばらくすると登場する、2枚のIDディスクで戦う やたら強い悪の敵「リンズラー」
そして、窮地に立ったサムを救助にあらわれる「クオラ」。

おどろくほど、とっとと、出てくる「フリン」(笑)

f:id:tsuchinoko118:20110921030701j:image:right:w200実は、あの後(前作の後)、プログラム「クルー」を書き、「トロン」とともにあらたな電子世界グリッドの構築を夢見て、頑張っていたところ、とつぜん裏切る「クルー」。「クルー」は、電子世界を我がモノにしようと支配し・・・

なんだ、1作目と同じ話ではないか。

で、「フリン」を電子世界に閉じ込めたのだという。そのため、現実世界では失踪になり20年も音信不通だったということだった。
なんだかんだで、「クルー」と、そして、その部下で異常に強い「リンズラー」を相手に逃げ、戦い、どうにかして、この「クルーに支配された電子世界」を終わらようということになる。

まんま1作目を、なぞってるだけの話だ。

レコグナイザー、ライトサイクル、シュミレーション海を渡る電子帆船、戦艦。ややデザインが今風になっただけで、ひたすら、なぞりつづけるだけの話が3Dで展開される。
(ただし、奥行のない、”飛び出す絵本”の3Dで(笑))
ライトサイクルは直角に曲がれ!

物語は、終盤に近いのに、全く出てこない「トロン」。いったいどういうことだ。


と、初見の感想は、ひどく期待はずれのものであったのが正直なところ。
先日、オリジナル版初のBD化がされたというので、オリジナル+レガシーのBDを購入したのだが、実に、これが、もうかれこれ30回以上も観ているのに、まだ飽きない「TRON LEGACY」だったりして自分でも驚いている。

f:id:tsuchinoko118:20110921030703j:image:left:w220本作の良いところは、すごい世界観でも脅威の映像でもない。新しいデザインでも新しいキャラでもない。

この作品のあと別の作品で「無冠の名優」の汚名を返上し、アカデミー賞俳優となった「ジェフ・ブリッジス」。すなわち1作目の主人公「フリン」の物語。「フリン」の”コンピューター群像”として観ると、おそろしく味わい深いのだ。
その演技力も手伝って、ただのテッキーで自己顕示欲の塊、あらゆる行動の動機が自分のためだった「フリン(1作目)」が、本作では、社会貢献や責任を持った成長したフリン(2作目)となり、自分の若き日のコピーである「クルー」と対峙する。
自分探しならぬ、目の前の自分との戦いが描かれ、ジェフ・ブリッジスが、本当は主人公のサムをよそに、好演している。

サムを観てはいけない。クオラに心を奪われてはいけない。
ライトサイクル、レコグナイザーに目を向けてはいけない。
I-MAX や 3Dに興味をそそられてはいけない。

本作は「ジェフ・ブリッジス」主演、「フリンの一生パート2」で観るべき桂作なのだ。