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★ The Tsuchinoko News 2 (つちのこ通信2) ★

重要な話から、どうでもいいことまで。ほとんど役に立たないことを書き連ねています。

【映画】家族ゲーム

あんまりオススメしない映画

f:id:tsuchinoko118:20120513090312j:image:left:w230今は亡き森田芳光監督に、今は亡き伊丹十三と今は亡き松田優作に、本作がデビュー作となる宮川一朗太らが出演する「ホームドラマ」である。

成績は下の下の沼田茂之の高校受験を控えたごく普通の4人家族で、どうにか茂之の成績を上げ一流の高校に合格すべく吉本という家庭教師を呼んだ。

という非常にたわいないストーリーで、結果、受験に合格するという、これまたくだらない結末を迎えるドラマで、当時は「受験戦争」という言葉が取りざたされ、社会問題にもなりそうな気配だったことを考慮にいれても、なんてこともない話となんてこともない結末の、ごくごく普通の「ホームドラマ」である。

ところが、ここに森田芳光監督らが絡んでくると、なんとも言い様のない独特の乾いた”傑作”になるから不思議だ。

f:id:tsuchinoko118:20120513090311j:image:right:w260設定やストーリーは前述のように、どこにでも落ちていそうな題材と展開なのだが、たとえば、家族が食事をするシーンになると、食卓を囲むのではなく食卓に一列に並ぶ。家庭教師の吉本は、いつも植物図鑑を持ち歩き、感情を表に出さないような淡々とした面持ちで、意外に熱血漢だったりする。突然、机の下から撮る=そのために、机が透明のアクリル板になる。目玉焼きの黄身(半熟)をちゅーちゅー吸う父、その音が異常に大きい。豆乳をストローでちゅうちゅうずうずう吸う、その音。演出の意図が不明なシーンも多い。その乾いた演出の中で、

家族の話題といえば「一流高校にはいり、一流大学にはいり・・・ 子供たち本人の希望など、おかまいなし、全ては親に決定権がある」と言った話しかしない親。幼なじみや友人との関わり方しにか興味がない子供など、まったくバラバラの乾いた家族像

が描かれる。そこに入ってくる家庭教師吉本は三流大学生。やってることは熱血漢で正義漢なのだが、松田優作があえて淡々と能面づらをしながら、勉強を教え、ケンカまで教えたりして、最後には、家族に呆れ怒り、やはり能面のまま、食卓を壊して去って行く。

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全体としては、当時のバラバラの思いの家族=すなわち家族ゲームと受験戦争を題材に、熱血家庭教師が切り込んでいくスタイルなのだが、そのように見えないところが傑作と言わしめるところなのかも知れない。

本作は、長渕剛主演でテレビ化され、ごく普通の○年○組○○先生のような青春ドラマになり人気を博し、すっかりイメージが変わってしまい、森田監督+松田優作の本作とは似ても似つかないもになっていってしまったが、筆者的には、やはり、この映画版が一番しっくりくる。

今は、そのバラバラの家族が、むしろ逆に必死で絆を探したり、受験戦争うんぬんよりも就職氷河期で就活戦線が厳しく、その世相には合わない作品だが、だからこそあえて、今もう一度観てみるのも新しい発見があっておもしろいのではないかと思ってみたりもする。