★ The Tsuchinoko News 2 (つちのこ通信2) ★

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【映画】羊たちの沈黙

f:id:tsuchinoko118:20110904064454j:image:left:w220原作者トマス・ハリスはAP通信社のレポーター兼編集者だった頃「エド・ゲイン」事件に遭遇。この事件から、皮を剥ぎ、人肉を食べるという猟奇的なモチーフで「レッド・ドラゴン」を執筆、ハンニバル・レクターという希有の殺人鬼で人肉を食するグルメの元・精神科医、檻の中で推察する”名探偵(?)”像を産み出す。

本作「羊たちの沈黙」は、”レクター”シリーズの2作目。

B級映画ばかりを取り扱っていた倒産寸前のオライオン・ピクチャーズが製作・配給。

B級映画の名プロデューサー、ロジャー・コーマン門下生であるジョナサン・デミが監督。

B級映画の音楽で活躍していたハワード・ショワが音楽担当。

と、全開全力でB級テイストな作品として世に送り出された「猟奇殺人もの」でありサイコ・スリラー・サスペンスである。

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B級の作品にして、アンモラルな内容、スプラッター描写もある本作が、どういうわけか第64回アカデミー賞にノミネートされてしまった。作品中の殺人犯=バッファロービルが、エド・ゲインをモチーフにした殺人犯で、大柄の女性を殺して皮を剥ぎ、それで作った衣服をまとう性倒錯者だということで、一部の同性愛者団体などから激しいバッシングを受けるも、結局アカデミー賞5部門を受賞。近年の名作として名を残すことになる。


女性FBI訓練生クラリス・スターリングは、上司のジャック・クロフォードに命じられ、「バッファロービル連続殺人事件」の捜査のため、収監されている人肉食いの殺人鬼で元精神科医ハンニバル・レクターを尋ねるよう命じる。地下牢の前で、連続殺人事件の糸口を探そうと推察(プロファイリング)を重ねる二人だったが、次第に、恋愛とも友情とも異なる奇妙な関係へと発展していく。

ハンニバル・レクターアンソニー・ホプキンスの当たり役となり大絶賛された本作は、続編「ハンニバル」と、すでに「マンイーター」として映画化されていた第1作目「レッド・ドラゴン」も映画化された。

f:id:tsuchinoko118:20091127164529j:image:left:w300異様な設定、猟奇殺人、プロファイリングという概念、さまざまなB級テイスト満載の本作だが、アンソニー・ホプキンスジョディ・フォスターの演技合戦、人間の内面を捉えようとした演出が重厚なドラマ性を産んでいる。

アカデミー賞ということで言えば、この手の作品では、オカルトホラー「エクソシスト」に次ぐ快挙で、B級サイコスリラーとしては異例の高い評価と言える。

筆者も、本作は、たいへん高く評価しており、オールタイムの1本となっている。

それにしても「犯人」「事件」「追跡」よりも、レクターとクラリスの関係が第一に描かれているのは、この手の作品にしては、ちょっと変わったところだ。また、やたらと顔のアップが多く、役者の「目の演技」が重要視されている演出手法にも脱帽だ。

本作の大ヒットを受けて、倒産寸前だったオライオン・ピクチャーズが持ち直したことも評価が高い。映画って半分はバクチなんですね。