★ The Tsuchinoko News 2 (つちのこ通信2) ★

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【映画】28日後・・・

f:id:tsuchinoko118:20110824082839j:image:left:w220今でこそ「スラムドッグ$ミリオネア」のトロント国際映画賞、ゴールデングローブ賞、アカデミー賞の受賞で、すっかり名監督だが、当時何をやっても当たらず不当たりをつづけていたスランプまっしぐらの「ダニーボイル」の記念すべき復活作品。全編デジタルビデオで撮影された低予算サバイバルホラーが「28日後・・・」だ。

医科学研究所で秘密裏に研究されていた感染症ウイルス「レイジ」。過激な動物愛護団体のメンバーによって、実験台にされていた猿を解放したころから、レイジは、またたく間に英国全土に感染が広がる。28日後、英国は感染者の群れとゴーストタウン、荒れ果てた島と化した。
わずかに感染をまぬがれた青年ジムと女性セリーナ、そしてフランクとハンナの親娘は、ラジオで流れる「感染の答えと安全がある」という声を聞き、炎上を続けるマンチェスターに向かう。そこには感染を免れた幾人かの軍人たちがいた。そして・・・・


どう見てもゾンビ。

ウイルスがどうのこうの、で、凶暴化した「生きた病人」が襲ってくるが、本質は、どう見ても「ゾンビ」である。

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低予算映画だが、脚本や演出は非常に丁寧で、あくまでもシリアスなストーリー展開も手伝って、一分たりとも気を抜くことなく恐怖が続く。次はどうなるのか、「やつら」が襲ってくるぞ、ここまで飽きさせないゾンビ系作品も稀少で、全世界で大ヒットした。まさしく「ダニー・ボイル」復活である。

どう考えても妙な伏線、安っぽいCG、お約束の誰もいないショッピングセンターで買い物などのシーンもあるが、それを差し引いてもおもしろい作品だ。

絶望的な、光さしこまない終末的映像が、すばらしい。

「レイジ」すなわち「凶暴」に感染した感染者たちは、みな一様に、それこそゾンビのごとく走って、獲物である非感染者(人間)を追いかけてくる。いわゆる「走るゾンビ系」。一連の「ゾンビ映画」のように、追いかけてくるものから逃げるだけではなく、それぞれの個性の「生き様」が、非常に繊細に、緻密に描かれた本作品は、なかなかドラマ性も高い。

仲間を愛し、人を愛する主人公ジムは、なりふりかまわず、仲間を守るため、あらゆる手段を講じる。
女性セリーナは、恐怖におののき臆病であるがゆえに、あえて感情を抑え、クールに物事に対処し、生き延びようとする。
後半から登場の軍人ウエスト少佐は、この狂った事態に託けて、小さな国の支配者のつもり。言ってることもやってることも、おかしい。態度だけは紳士的。ズバリいやなやつだが、クリストファー。エクルストンなので筆者は許す。(最後、死にますけどね)。

冒頭の「動物愛護団体が猿を解放したために、ウイルスが蔓延」というところも含め、人間の描き方は、サラリとしていながら、ブラックユーモアがきいている。たいへんいい。

いいことずくめではあれど、どのキャラクターにも共感できない部分がある。みんな、おかしい。。。。 心を堅く閉ざし、いつも警戒している。あたかも、すでに、別のウイルスに感染しているかのように。。。 作品は、それが人間の「性(さが)」だと、言い切りながら、淡々とラストに向かう。

この作品の真の「怖さ」は、実は、そこにある。