【映画】デイブレイカー
世界の人口の9割がバンパイアという近未来。深刻な食糧危機が発生していた。すなわち人間が少なくなり生き血をすする対象=食料がなくなっていったのだ。大手の造血会社(といっても人間を捕獲し、血を売ってる)の研究員エドワードは、代替となる血液の開発を任されていたが、なかなかうまくいかない。ある日のこと、エドワードは人間の女性オードリーと、人間の男性ライオネルと出会い、人間とバンパイア両方を救う驚くべき方法があると告げられる。
古来”化け物”として描かれてきたバンパイア。どんな映画でも、いつでも人間とバンパイアは敵対し、殺し合うのだが、本作デイブレイカーでは、両方を救うという風変わりなプロット。
ずいぶんと変わったストーリーだと思ったら、メイケル&ピーター・スピエリッグ兄弟の作品であった。彼らは、これまた風変わりなプロットのゾンビもの「アンデッド」を監督していたりする。彼らの作風は、ホラーの風体をしていながら実はSFだったりするところだが、本作デイブレイカーでも、奇想天外な結論を用意していた。
登場人物の「人間の男ライオネル」(ウィレム・デフォー)は、実は昔はバンパイアだったのだが「治った」という(笑)
バンパイアなので夜しか活動できず太陽が大の苦手なのだが、ライオネルは太陽光を完全に遮る改造車をつくり、真っ昼間に、ほとんど誰もいない道をハイスピードでカッとばしていた。ところが、自動車事故を起こしてしまい身体が表に投げ出される。太陽光をモロに浴びて、焼け焦げそうになるライオネルだったが、そのまま池にはまって何とか太陽光を逃れ九死に一生を得た。なんともすごいシチュエーションだが、そのおかげで「治った」というのだ(笑)
バンパイアが治る、というのもどうかと思うが、主人公エドワード(なんとも情けない顔がよく似合うイーサン・ホーク)は、その話しをきいて、自ら太陽光を一瞬だけ浴びるという、実験を繰り返し、ついには彼もまた「治って」しまう(笑)
ボスキャラであり、造血会社の社長(サムニール)に、その人間の姿で「治療法を見つけた」と会いに行くエドワード。社長を挑発し、”人間に戻った”自らを噛みつかせると、なんと、社長も「治ってしまう」(笑)
血液不足のご時世なので、治った社長=すなわち人間を見ると、たまらず襲ってしまう軍人たち。集団で襲い、やりすぎて、社長の首をもいで殺してしまう。すると、その軍人たちもまた「治ってしまう」(笑)
奇妙な食物連鎖が、9割にものぼるバンパイアを次々と治してしまうのだ(笑)
最初は、なぜ、こんなB級まるだしの作品に、情けない顔がよく似合うイーサンホークが主演しているのだろうと思ったが、このオチなら適任だ。悪役顔が板についたサムニールとの対比がすばらしい。
「アンデッド」に続き、なんだか一発ネタの気もするが、豪華な実力派俳優の演技合戦で、なんども楽しめる快作となっている。しかしながら、怪作でもある(笑)
「治る」っていうのが、なんとも・・・ 筆者は、いまだに首をかしげながら本作を見ている。