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★ The Tsuchinoko News 2 (つちのこ通信2) ★

重要な話から、どうでもいいことまで。ほとんど役に立たないことを書き連ねています。

【映画】愛を読むひと

f:id:tsuchinoko118:20120704170541j:image:left:w260第二次世界大戦直後のドイツで15歳の少年マイケル(ミヒャエル)は学校帰りに気分が悪くなり嘔吐する。偶然通りかかったハンナという女性に介抱され助けてもらったマイケルは、21歳年上の(36歳の)ハンナと男女肉体関係を持つようになる。ハンナは本を読んでもらうのが大好きで、マイケルは毎日のように彼女の家に通い朗読をする。

ある日、ハンナは勤め先で昇進を約束され、それ以来音信不通になった。

彼女を失った傷心のマイケルだったが、法科の大学生になったある日、ゼミでナチスによる放火殺人事件の裁判を傍聴しに行くと、そこには被告席に座るハンナの姿があった。裁判は被告側に不利に進む。ハンナは放火殺人の首謀者とされ、その証拠としてSSへの報告書が提出される。その報告書はハンナが書いたものだという。ハンナは否定するが、「その証拠としてハンナの筆跡を見よう」という提案がなされたとき、「私が書きました」と罪を認める証言をする。ハンナは事件の首謀者として、無期懲役の判決を受けた。

f:id:tsuchinoko118:20120704170543j:image:right:w300しかしマイケルは知っていた。彼女は字を読めず、字を書けないのだ。ゼミの教授に真実を裁判所に伝えるべきだと諭されるが、結局、収監されるハンナにも面会せず、裁判所にも何も言わないままだった。

10年余り経過し、結婚し娘が一人産まれ、離婚し、という状況のマイケルは、昔を思い出したかのように、カセットテープに本の朗読を録音し、ハンナに送りはじめる。ハンナは、次第に朗読を聴くだけではなく、字を学び、本を読むようになる。しかし、マイケルは、ハンナに面会に行こうとはしなかった。

ハンナが出所することになった。友人も家族も身よりのいないハンナだったので、刑務所はマイケルに迎えに来てもらうように連絡をする。20年近くの時を経て、ハンナと再会するマイケル。そして、出所の日。ハンナは首をつって自殺した。


タイタニック」でボロカスに言われていたケイト・ウィンスレットは、その後、実力派の女優として、とてもすばらしい演技を披露し、その名を知られるようになっている。本作は、そのケイト・ウィンスレット演じるハンナの物語を、少年マイケルの視点から描いている。

マイケルには、ヴォルデモートではなく、レイフ・ファインズ。なのだが、大半が少年期のマイケルの話になっており、事実上の主演は少年マイケルを演じるダフィット・クロスさんであろう。

f:id:tsuchinoko118:20120704170542j:image:left:w300一見、若い少年と中年女性の”いけない恋”をズルズルと引きづった恋愛映画のつくりではあるが、その中身には、第二次世界大戦のユダヤ人虐殺事件や、不識字という問題が、単に戦争だからという安易な論調ではなく織り込まれ好感が持てた。ゼミの教授のブルーノ・ガンツのグサリとささる指摘や、ユダヤ人を殺したということだけで感情的になり真実を見落とし「ボクが決める善悪の価値観で、ボクが犯人と思うだけで、その犯人かどうかもわからない犯人を殺してもいい」という主張がいかに危険で身勝手なものかが鋭く描かれる。小さなところでは裁判を傍聴した学生、そして大きなところでは第二次世界大戦。

マイケルがなぜ真実を告げなかったのか、そして、なぜハンナに面会しなかったのか。そしてまた、ハンナはなぜ、昇進の話を蹴ってマイケルから無言で離れ、ユダヤ人虐殺の場にいたのか。
描かれていることは、点・点・点の描画で、ストレートには語っていない分、”行間を読むこと”を求められる作品。

少なくとも筆者は、この作品が単純な「愛を読むひと」とかいう恋愛ものとは思えないのだ。原題は「The Reader」。愛は読まない。
なぜなら、登場人物たちは、肉欲の愛こそあっても、ほんとうの愛は見失っているからだ。むしろ「愛を読もうと必死で悩み手探りしている人」といった感じの作品である。