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★ The Tsuchinoko News 2 (つちのこ通信2) ★

重要な話から、どうでもいいことまで。ほとんど役に立たないことを書き連ねています。

【映画】わたしを離さないで

f:id:tsuchinoko118:20120605201134j:image:left:w240西暦20XX年。人類は、ついにクローン人間を製造し、成長させることに成功した。クローン人間は、オリジナルの人間と全く同じ。唯一違うところは、寿命がせいぜい長くて30年ほどということだけだ。人類は、自らの健康のため、病の療養のため、いのちを救うため、クローンのフレッシュで自らに適合した臓器を欲していた。人類は、代用臓器として、クローン人間を家畜化していたのだ。

・・・・と書くと、「わたしを離さないで」というタイトルとは掛け離れた近未来SF作品のように思えるが、本作は、間違いなくSF作品である。

近い未来。介護人キャシーは、ヘールシャムで「提供者」の面倒を見ていた。「提供者」はクローン人間。オリジナルから産まれたヒト・クローンである彼らは、ごく普通に成長し成人していくが、オリジナルへ臓器を「提供」するために存在するため、天寿を全うすることはない。1度「提供」し、「終了」してしまう「提供者」もあれば、2度、3度と「提供」する者もいる。4度の提供でも、まだ「終了」しない時は、介護人もつかず、「終了」するまで「提供」が続く。しかし、「提供する」ために製造されたクローンであるとしても、怒り、泣き、ねたみ、叫び、恋をし、生きる。
クローンが、そうしているのではない。
彼らは人間なのである。

あるとき、「真剣に愛し合っていることを証明できれば、提供は数年先延ばしにできる」という噂を耳にした、キャシーとトミーは、”申請”をするためマダムに会いに行く。

すなわち(少しでも長く)生きていたいのだ。

しかし現実には延長も申請も存在しない。絶望の雄叫びをあげるトミー。

4度目の「提供」で「終了」する。

すべてを見続けてきた介護人キャシーも、「はじめての提供」の時がやってきた。


f:id:tsuchinoko118:20120605201132j:image:right:w240作品そのものは内容・演出・すべてが「あざとい」ため、クローン人間の人権(公民権)のようになってしまっているが、本作の奥底には、そんな儀礼的な生やさしい主張ではなく、逆に「生きる権利」という人権への、強烈なアンチテーゼが感じられる。互いに分け合あったり、自己を犠牲にする権利の使用法ではなく、自分が奪い得るための権利の濫用に対しての悲痛な叫びである。トミーは、気が触れたように叫ぶ。

そして、傲慢になった人間たちに、おだやかに「運命」を見せつけるのだ。

f:id:tsuchinoko118:20120605201133j:image:left:w240わたしたちが「提供」し、わたしたちが「終了」したとしても、あなたがたも、いずれは「終了」する。

いったい何が違うというのか。

あなたたちは「生きる」ために、そうするという。

しかし「生きる」どころか、しばらくすれば「終了」するのだ。

すなわち、あなたたちは、自分が・・・

作品は静かにそう語りかける。