読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

★ The Tsuchinoko News 2 (つちのこ通信2) ★

重要な話から、どうでもいいことまで。ほとんど役に立たないことを書き連ねています。

【映画】戦場のメリークリスマス

f:id:tsuchinoko118:20121016073201j:image:left:w260まだ漫才師だった頃のビートたけしと、まだ駆け出しのミュージシャンだった坂本龍一がスクリーンに登場すると話題になった大島渚監督の「戦場のメリークリスマス」を、筆者はなぜか「ザ・デイ・アフター」との二本立てで見た。”戦場の”とついているものの、反戦映画でもなければ戦争賛美映画でもない。太平洋戦争(あるいは第二次世界大戦あるいは大東亜戦争)において、南国の日本軍指揮下の捕虜収容所を部隊に「日本」と「イギリス」を軸にした二つの全く異なる文化を描いている。

物語の中心になるのは、ヨノイ大尉(坂本龍一)とハラ軍曹(たけし)、セリアズ(デビッドボウイ)とローレンス(トムコンティ)。

226事件に参加しようと決起したものの満州へ行っていたため参加できず死に場所を探しているものの死にきれず混沌とした心の中で何とか秩序を保とうと躍起になるセンチメンタルなヨノイ大尉。
暴力的で野蛮、命令には忠実なハラ軍曹。
イギリス軍のジャワ島攻略のための先兵と疑われ捕虜収容所にたたき込まれた終始反抗的なセリアズ。
捕虜収容所で日本語ができるため連絡係として日本とイギリスを行ったり来たりしているローレンス。

この4名で話しは進んでいく。

f:id:tsuchinoko118:20121016073227j:image:right:w260南国の日本軍指揮下にある収容所で、カネモトという軍属が捕虜デ・ヨンを犯すという事件が発生した。ハラ軍曹の独断(裁判なき裁き)で切腹を命じられるカネモト。ローレンスが大声で助けを求めるとヨノイ大尉が現れ、報告なき断罪は許されないと、その場を収める。
投降してきたイギリス軍のジャック・セリアズとヨノイは出会う。弁護士なき裁判でセリアズはヨノイの管理する収容所に収容されることとなった。
なにかと反抗的なセリアズ。日本軍の命令にことごとく逆らうが、なぜかヨノイは彼のことが気になって仕方がない。
ある日のこと、無線機が発見され、イギリス軍俘虜の誰かが持ち込んだとされ、セリアズとローレンスは独房に放り込まれる。ヨノイの心を乱す悪魔として、日本人兵士が夜中に独房に潜入、セリアズの処刑を試みるも失敗する。セリアズはローレンスを抱え込み脱走を試みるが、ヨノイらに発見されてしまう。しかし、ヨノイは、セリアズをその場で罰し処刑するなどの行為に及ぶことができない。ローレンスはセリアズに「どうやら君は彼に好かれているようだ」と告げる。
再び独房に入れられたセリアズとローレンスだったが、あるクリスマスの夜、泥酔したハラ軍曹の独断によって「今日、私、ファーゼル・クリスマス(サンタクロース)」と笑顔で彼らを釈放する。
f:id:tsuchinoko118:20121016073245j:image:right:w260ヨノイは収容している俘虜たちを集め、鉄砲に詳しい俘虜は何人いるのかと怒号を上げるが俘虜たちは答えない。号を濁したヨノイは、俘虜を処刑すると日本刀を抜く。
するとセリアズは無言でヨノイに近づき抱擁しキスをするのだった。
腰が砕けてその場で倒れてしまうヨノイ。

新しい収容所長がやってきた。
セリアズを生き埋めにしろと命じると、セリアズは首だけ地上に出した格好で生き埋めにされる。
間もなく死を迎えるだろうセリアズの前にヨノイが現れた。ヨノイは、セリアズの髪を切ると大事そうに懐に入れて立ち去った。その直後セリアズは死んだ。

戦争が終結し4年後。イギリス軍指揮下の収容所にいるハラ元軍曹は、ローレンスに連絡をとった。ローレンスは快くハラの前に現れる。ハラは明日死刑に処せられると告げる。しばらくの時、ハラとローレンスは昔話、あの南国の収容所の話しをする。あのクリスマスの夜の話しだ。
時間が来てローレンスは「さよならハラさん」とお辞儀をして立ち去ろうとした。
大声で「ローレンス!」と叫ぶハラ。
笑顔で「メリークリスマス。メリークリスマス。ミスターローレンス」と別れを告げた。


f:id:tsuchinoko118:20121016073307j:image:left:w300基本的には全く異なる文化・全く異なる立場という対比の中で、その違いを埋められない人間像を描く。日本軍とイギリス軍。神道・仏教とキリスト教。監禁する側とされる側。同じ人間でありながら、属する団体が違うことで考え方も正義も悪も全てが、あたかも真偽が逆であるかのように異なる。日本語のできるイギリス兵ローレンスは、日本とイギリスを行ったり来たりしながら、その違いを埋め合わせる存在であるかのように振る舞うが、日本からもイギリスからもコウモリであるかのように煙たがられる存在となってしまう。民族だ人種だと言ってみても、自分あるいは自分たちではなければ、それはもう軽蔑すべき敵なのだ。
しかも戦時下ということもあって、それは終始命を失う危険にさらされている。はたまた国際法があろうが裁判があろうが結局はそれをないがしろにして殺す、殴る、暴言を吐くなど怒りと憎しみに満ちた混沌とした状況で、そのはけ口を「敵」に求めているところもある。

しかし、心の奥底では、セリアズとヨノイがひかれたように。バリバリの日本兵ハラがクリスマスを祝い釈放したように。ローレスンがイギリスも日本も愛したように。敵でも何でもない友情あるいは愛情があると、映画は語る。

もちろん大島渚監督作品なので、同性愛(的)描写が多い。

本作で描かれる戦争は、なぜか余所事(他人事)で、その状況が仕方なく敵同士をつくっているかのような描写がなされている。それが事実かどうかはさておき、仲間をつくれば敵ができる、その現実をうまく描いているように思う。

音楽は、坂本龍一。プロフェット5によるオーケトレーションが美しく、主題曲「Merry Chiristmas,Mr.Lowrence」は、いまもライブ演奏されるほどに、彼の代表作品となった。また、その後、映画音楽を手がけることも多くなり、YMOの坂本教授から世界のサカモトへと飛翔するきっかけにもなった。

たけしは、あいかわらず演技力はないが、本作を機に?映画の世界にも足を踏み入れ、いまでもバイオレンス描写のイカす 映画監督 北野たけし がいる。彼もまた世界の たけし となっていることは周知のことである。