【IoT】mbed と 趣味のはんだ付け:プリント基板を手で作る 篇
IoTデバイスは電気回路。つなげば動く。のだけども、電気回路もまた電子部品をつなげば動く。昔はユニバーサル基板やラグ端子板で、せっせと足のついた電子部品を配線・はんだ付けし、ものすごく時間がかかった。昨今ではブレッドボードという非常に便利なものがあり、差すだけで電気回路を構成することができるようになった。
とはいえ、米粒大のチップ部品では、さすがに差すだけ(ってどこに?)は出来ないので、(ユニバーサル基板にはんだ付けをするのもアリだけど)結局は、プリント基板を作ることになる。mbed の道ははるかに遠い(って、そこからかい!)
筆者が昔プリント基板を作る際には、銅箔をはった板に、油性マジックか、レジストテープを貼って、エッチングという作り方しか出来なかったが、当然ながら、米粒大のチップ部品には対応できない。
しかし、今は、けっこう良い道具・材料が揃っていたりするので、昔よりは手軽に基板製作が可能になった。(といっても、ものすごい手間がかかるのは間違いないわけだが(笑))
① フリーのPCBCAD:KiCAD
回路図は手書きでも何でもよいが、プリント基板を作るとなると、アートワーク出来ないと苦しい。ちまたでは EAGLE(独CadSoft社製) がよく使われている。ただし無償で使えるフリー版では基板の大きさ、層数に限りがあるので、完全フリー/オープンソースの KiCAD を使ってみた。
KiCADについては
kicad.jp | オープンソースのPCB CAD『KiCad』の日本ユーザ コミュニティです。
に詳しい(ダウンロードもできる)
CADはどれもこれも操作性にクセがあり、KiCADもご多分に漏れずクセがある。基本的なところはどれも似たようなものだが、KiCADの場合、Windows OS のファイルシステムやデータベース構造などを理解していないと「これ、ひょっとしてバグ?」というようなところが何カ所もある。とくに、回路図を描く際の部品=モジュールの登録・編集と、PCBアートワーク時のモジュール登録・編集の、アーキテクチャの違いは混乱する(笑)また、EAGLE に比べ、ユーザーが少ないせいなのか、部品のライブラリがインターネット上に、あまり落ちていない。
とはいえ、回路図から出力されるネットリスト(配線の接続構造)から、実際のフットプリントを割り当てることが柔軟に出来ることや、基板の大きさや層数に制限がないなど、よい面もかなりある。
筆者はこれまで回路図は手で描いて・・・しか、やったことがなく(笑)とにもかくにも自動で結線、チェックまでしてくれる”賢さ”に驚いて、最近は KiCADばかり(笑)
ドがつく素人まるだし状態だ(笑)
②KiCADからアートワークを印刷
CADを使う目的は、エッチング用のアートワークを印刷することにある。
(最近は、データを入稿すれば、基板をオンデマンドで作ってくれるところが、いくつもあるので、CADからデータを基板屋さんに送るのが最大の目的・・・だったりもするが、この話は、また後日)
インクジェットプリンタで、光沢紙(あればOHPフィルム)、高精細、モノクロを指定して、かなりクセのある KiCADの操作パネルを設定し印刷すると、”マジック手書き”や”レジストテープ”では不可能な美しいアートワーク(笑)が印刷される。
印刷する用紙は、サンハヤト社の「感光基板のアートワーク用インクジェットフィルム」。
ただし、このフィルムがものすごいお値段する。おおよそ1枚500円。
インクがすぐ乾く、かなりきれいに印刷される(やってみたら 0.35mmmまでは全然平気、0.2mmあたりまで大丈夫だった)、など、非常によく出来たもので、たしかに「高密度」パターンフィルムが製作可能だ。
しかし高コスト。というわけで、少しでもコストダウンするなら コクヨ OHPフィルム が おすすめ。
試してみたら品質そのものは、あまり変わらない。ただし、乾くまで非常に時間がかかるのと、フィルム同志が粘着してくっついてしまうので、失敗のことを考えると、あまりコストダウンにはならないかも。
③ クイックポジ感光基板
まず、サンハヤトの粉末現像液をお湯に溶かす。温度計で38℃を確認してキープ。筆者はパッドを2枚重ねにして、下にもお湯をはって温度管理している。うまくいきやすいのは35度~40度あたり。ここをはずすと、現像失敗、エッチングも失敗と、高コストなクイックポジ基板を廃棄してしまうことになるので、厳密に。
バキュームクランプで、先ほど作ったパターンフィルムと、サンハヤトのクイックポジ感光基板を圧着する。必ずする。これをしないと、パターンがボヤけて、高密度パターンの場合は失敗する。
次に感光基板の説明書にある時間+ちょっとで、紫外線照射。すると、さほど色が変わったとは思われないものが出来上がる。
ここで、特記したいことは、サンハヤトのクイックポジ感光基板を使う時は、サンハヤトのバキュームクランプ、サンハヤトのライトボックスを使うこと。というのも、化学反応を利用しているため、自作蛍光灯ライトボックスなどなど別の環境だと、成功する条件=時間などが合わず、とにかく失敗しまくりになるから。ここは大人しく純正で揃えた方がよい。
筆者も、この高コストをなんとかしようと、富士薬品工業の ポジ型フォトレジスト FPPR #200を試してみたが、とにかく、うまくいかない(笑)感光基板をうまく作れない、ようやく作れたと思ったら、今度は感光時間などが(自作はムラがあるため)一定しないなどなど、高密度なPCBアートワークで利用するには無理があるようだ。ここは大人しくサンハヤトの既製品で(笑)
規定の紫外線照射が終わったら、38度あたりの現像液で、しゃばしゃばする。すると銅箔にくっきりとアートワーク(フットプリント)のマスクが浮き上がる。これを水洗いする。
これをエッチング液(第2酸化鉄溶液)にドボっとつけて、マスクを溶かす。
エッチング液はサンハヤトのものでなくても銅版画用に「腐食液」というものが売られている。こちらの方が安いし、性能も大して変わらない。しかしエッチング液は、廃液処理をしてからでないと捨てられないので、何らかの中和が必要になる。(必ず廃液処理は必要!そのまま流し台やトイレに流してはいけない!!)サンハヤトのエッチング液には廃液処理用の中和剤もセットになっているので、このあたりでコスト計算をする必要がある。筆者は、4Lの腐食液と、20Kgの石灰で、いったいどこに置くのかと、保管場所の問題で断念した(笑)
業者に廃液処理を依頼するというのではない限り、サンハヤトのを使った方がよいと判断した。
出来上がった基板には、まだマスクがついているので、再度、紫外線照射をして現像液でしゃばしゃばすると、きれいに取れる。
エッチングについては、湯煎する、もみもみするなど、いろいろと手法があるようだ。
エッチング液を40度~50度に暖め、常に攪拌すると、なかなかシャープなものができあがる。そんなわけで、結果的には、やはりサンハヤト社のエッチング層と、ぶくぶく泡の出る装置と、エッチン液でも溶けないヒーターを導入することとなった。
手作業よりもはるかに効率がよく、なおかつ、よいもの(実用的なもの)が出来る。
穴を開けて、切って、ようやく基板の完成。
銅箔は放っておくとさびるので、フラックスを塗っておく。
また、このあと、ソルダレジストを行うといいのだが、非常に面倒で大変なので(しっかりやってみて、失敗している。たぶん大きな基板で、それなりの道具があれば、きちんと出来るのだろうが、手作業では、やたらとしきいが高い。そこまでやるのなら基板屋に出した方がよい(笑))あきらめることにする(笑)
できなくはないが、ものすごい手間ヒマがかかるわりには思うようにはいかない(笑)
このあたりの「ハウツー」は
オリジナル基板作成ステップ | エレクトロニクス分野をサポートする製造メーカー サンハヤト株式会社
に詳しい。
④メタルマスク・ステンシルの製作に失敗
本来ここで、クリームはんだ塗布ようのマスク:ステンシル=通称メタルマスクを作るのだが、なかなかうまくいかない。がんばって作るよりも、業者にメタルマスクの製作を依頼した方がよいと思った。
が、どうしても必要というわけではないことがわかったので、失敗記録を残しておくことにする。
まず最初に試したのは、カッティングプロッタで、防水紙(ポリプロピレン合成紙)をカットする。KiCADから、DXFでステンシル用のデータを出力し、プロッタに添付の氏ソフトに読み込んでカット。
動作そのものには問題がないが、0.nという小さなものが、並んでいると、ものの見事に紙が破れる(笑)紙の素材や、プロッタの調整など繰り返してみたが、ある程度スキマのあるものではうまく行くこともあるが、QFP や狭ピッチものがあると、ほぼ全滅した。この方法には無理がある。
次に試したのが PnPという PCB用のアイロンプリント。一昔、流行していたようだ。
マスクのパターンを、青い用紙に印刷、銅板を挟んで、ラミネーターで(アイロンで)圧着すると、そのまま転写される。
すると、ホコリやゴミ、用紙の曲がりやデコボコで、とにかく、まともに転写されない(笑)エッチングしてみたら、かなり近いイメージにまで到達するものの、意図しない穴が開く(笑)なお悪いことに、1mm 未満の位置が狂う。これはアイロンプリントという仕組み上、仕方がないのかも知れないが、ともかく使えないことがわかった。
⑤顕微鏡でハンダ付け
ステンシルが製作できないことがわかったので、クリームハンダ塗り込みで、リフロートースターという計画は失敗、関連機材は全て、押し入れに放り込まれることとなった(笑)
と、同時に、
というサイトを発見した。はんだ付け講座。多くの場合門外不出のノウハウを公開している滋賀県の企業で、リーマンショック時に取引先の大手から切り捨てられ倒産の危機に見舞われながらも、開き直って?始めた事業が「ハンダ付け講座」。というドラマティックな企業のようだ。
3216チップ抵抗、チップコンデンサのはんだ付け(実装) - YouTube
そこでモノタロウの顕微鏡を導入、明るくするライトをつけて、見よう見まねで「はんだ付け」をやってみることにした。
やってみたら、できた(笑)
クリームはんだを塗布して、あらかじめ部品を載せて、お蔵入りしたトースターで焼いてみたら、なかなかいい具合になった。部品点数が多いと大変ではあるが、それでも、ステンシルも、ソルダレジストもなしで、できることはわかった。
無論、高密度すぎると「はんだコテ」や「ピンセット」が入らないので、どうしても、ある程度の空間が必要になるが、そこまでの小型化はしないので、全然かまわない。
⑥ QFN系は、ヒートガンで、はんだ付け
リワークステーション858D というヒートガン=500℃くらいまで吹き出せるヘアドライヤーみたいなものを発見したので、サンハヤトの「特殊クリームハンダ」という注射器型のハンダを塗り塗り、ピンセントで部品を置いて(もちろん顕微鏡で)風力と温度を調整し、リフローのプロファイルを参考に、熱すると・・・
うまくいった。
ここで、思わぬ「はんだボール」に悩まされることになるものの、これは工場の自動挿入?でも起こるということらしいので、仕方がないとあきらめて・・・(汗)
ともかく、こちらも問題なく作れることがわかった。
⑦ まだまだ遠い mbed(笑)
そんなわけで、まだ mbed が出てこない(笑)
これは、電子工作として既製品を接続するだけで mbed みたいにするのではなく、作った回路を mbed で制御(若干語弊有り)しようという主旨 なので、mbed のために基板から作るという話しになっているためで、ホントの mbed は、もっと身近にある(笑)
この後、ここに書き切れないほどの実験を繰り返し(例えば、鉛フリーのハンダだったらどうなるのか、基板屋に基板を作ってもらったらどうなるのか、どうすればもっと成功率が上がるか品管志向、クイックポジ基板で両面基板作成のコツ、スルピンキットによるスルーホールの作成などなど)、おおよそなんとなく、現代風のハンダ付け・基板製作が、ちょっとだけわかってきて、それからようやく mbed (笑)