★ The Tsuchinoko News 2 (つちのこ通信2) ★

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【映画】寄生獣 完結編

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昨年暮れに公開された「寄生獣」の続編で完結編である(完結編といっても2部作なので前編・後編のような気もする。)

突如として現れた謎の寄生生物パラサイトは、人間の脳を乗っ取り、人間社会に潜み、人間を食料としていた。

ひょんな事故から脳を乗っ取られずに済んだ高校生・泉シンイチは右手に寄生生物を宿し、人間とパラサイトの混血となった。パラサイトは自らをミギーと名乗る。

パラサイトの存在を未だ知らない人間社会では連続猟奇殺人事件として警察の捜査が行われていたが、次第にナゾのバケモノ・寄生生物パラサイトの存在を知るに至る。

母親を寄生生物に殺害されたシンイチは怒りにまかせ、寄生生物をミギーとともに殺害していたが、焼け石に水、寄生生物は組織をつくり、田宮良子を筆頭に、市長として広川を擁立、市役所は寄生生物のコロニーと化していた。

しばらくして人間たちは寄生生物の存在に気づき、特別攻撃隊を組織し、市役所の寄生生物を皆殺しにしようと作戦を実行する。しかし、そこには、頭部、右腕、左腕、右足、左足、5つの寄生生物を宿した最強のパラサイト後藤がいた。

「この種を食い殺せ」人間に憎悪を抱く後藤と、人間たちの闘いが始まった。

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前作同様、なにしろ原作コミック9巻分を前編・後編で映像化しているので、非常に駆け足的に話しが進む。このあたりは監督の山崎貴の特徴というか弱点で、正直いって原作を知らなければ、さっぱり話がわからない。

前編で母親のエピソードを端折って作り替えたのと同じく、後編でも、”かな”のエピソードが端折られ、倉森のエピソードが作り替えられ、それでいて原作通りに話が進行するので、ついていくのが大変だ。

あまりマンガやテレビを見ない筆者だが、珍しく「寄生獣」については熱心なファンである。映画は映画、マンガはマンガと割り切って映画を単一の作品として鑑賞をする筆者も、話がツギハギ・ダイジェストで、頭の中で「マンガをペラペラとめくり」ああ、このシーンはこれだ、この前にこういうエピソードがあったはずだ、と空間を埋めながらの鑑賞となった。そうでないと話がよくわからないからだ(汗)

やはり前編で母親のエピソードを適当にあしらったのが致命傷で、田宮良子が子供を抱えながら死に、そこでシンイチが涙を流し、人としての愛情を思い出すエピソードが、かなり希薄。(筆者は、脳内変換したので、このシーンでは泣いた!)

山崎監督作品で、後藤のアクションを期待した筆者も悪いのだが、市役所での後藤のバトルが全部カット(笑)後藤は結局最初から最後まで、徒歩だけ(笑)というのは、ひっくりかえりそうになった(笑)

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脚本のまずさに加え、演出にも疑問が多い。主人公らはさておき、なにげに豪華な脇役陣。市長の広川に(なんと現代服はめずらしい)ネコサムライ北村一輝、最凶のパラサイト後藤に浅野忠信、売れないフリーのジャーナリスト(原作では私立探偵)倉森に大森南朋が、駆け足的ストーリー展開の中に、埋もれてしまって、影が薄いのも難点だ。このあたりは原作をなぞって前編後編なので仕方のないところもあるのだろうが、残念なところでもある。

反面、本作のCGの気合いの入れ方は山崎監督+白組にしてめずらしい。

基本的に猟奇殺人、人体破壊、血しぶき、暴力と、非常にアンモラルな内容で、遊星から物体Xを模した寄生生物パラサイトのぐちょぐちょモーフィングで、血だらけの肉の塊が画面を泳ぐ。昔はこれらを特殊メーキャップな技術で実現していたのが、これをCGでいうのだから、無理があるのではないかと思っていたりした。実際、前編では、いまひとつという感想だったのだが、本作では、冒頭からすさまじい量の血と肉。その勢いが最後まで衰えることなく・・・・後藤 vs 人間は期待していたのだが、全部カット・・・本当に残念だ(笑)ミキのバトルなんか要らないので後藤の方をやってほしかったものだ。

全般的には欠点も多い作品だが、それでも、ありがちな「肉欲・情欲・独占欲・ひとりよがりの一方的正義の押しつけ」を”愛”と言い換えたものではなく、「自己犠牲」と「他者(それは種が異なっても、敵であっても)への愛」を(原作が示していたように)きちんと描いており、非常に好感をもった。

たぶんBDは買うだろう(笑)

思えば、10年以上前にハリウッドでの映画化の話が持ち上がり、ハリウッドだとバケモノvs人間になってしまうと恐れつつ、結局、それがご破算になり、ここに至っての公開。感慨深いものがある。

惜しみない拍手を送りたい。

 

なお、コミックが原作のマンガ作品で、ポスターに「肉欲・情欲・独占欲を守れますか?」というキャッチコピーがあり、あたかも主人公の少年が、愛する少女を守り救うために、パラサイトと戦うようなイメージを打ち出しているが、詐欺なので気をつけていただきたい。正しいポスターは「君はまだ人間ですか?」だ。

(ちなみに筆者は人間ですか?と問われ「はいそうです」という自信がない(笑))

本作は、むしろ主人公の中の深い葛藤、そして、血しぶき、猟奇、人体破壊の作品である。まちがっても、デートや家族連れで楽しもうとしてはいけない。


「寄生獣 完結編」予告 - YouTube