【映画】寄生獣
遊星からの物体X、盗まれた町(ボディスナッチャーズ)を下敷きに(ぱくり)ながらも、主人公を高校生に据え、半”寄生獣”となってしまった彼の成長を描き、はたまた、人間と人間でない者を比較して描くことで、人とは何か、人間らしさとは何かを問いかける妙に説教臭いマンガ原作の待望の実写映画化作品である。
もともとハリウッドでの映画化が計画されたが頓挫、制作権を逆輸入する形で実現した実写映画化の監督は、山崎貴監督。もちろんCGは白組。
筆者にして珍しく原作のファンだったので公開日に劇場へと思っていたが、何かと超多忙だったので年末の鑑賞となった。
正直いえば山崎監督作品だったので、ぼろかすにダメ出し覚悟だったのだが、意外に良く出来た作品で、いつもなら山崎監督作品は30分も経過しないうちに飽きて、ついには途中でかえってしまうパターンなのだが、最後まで楽しめた。
ある日、何の理由もなく宇宙から寄生生命体の幼虫が降ってくる。なぞの寄生生命体は人間の耳から入り込み脳を食い、人体を乗っ取り、人間を食物とする恐ろしい生命体だった。高校生、泉シンイチも、寄生生命体に寄生されつつあったが、紆余曲折あって脳は食べられることなく、右腕に寄生される。自らの意思を持つ生命体は、右手を模した形でシンイチに寄生し「ミギーだ」と名乗る。
折しも寄生生命体=パラサイトによる人喰いは、猟奇殺人事件として警察の捜査が始まっていたが、その凄惨さが際立つだけで、捜査の進展は見られなかった。警察は、人間による殺人事件としてしか理解していなかったからだ。
寄生生命体=パラサイトはシンイチの通う高校にも現れた。田宮良子、島田秀男、そう名乗り、あたかも普通の人間として振る舞う彼らは、パラサイトたちで共同体をつくり組織だって活動していた。組織には、政治家=市長として立候補する広川、その秘書、草野、ボディガード後藤たちがいた。彼らは、ひそかに、確実に、気づかれることなく人間社会に入り込み、人間を捕食していた。
ある日のこと、人間の脳が生き残ったままのシンイチとミギーに危機感を覚えたパラサイト「A」は彼らを殺害しようとする。そして、シンイチの母親・信子を食らい、その身体を乗っ取る。
あいかわらず山崎監督作品なので、原作を端折って駆け足的に話が進む「ダイジェスト版」。2時間枠に収めなくてはならない事情もわかるのだが、何もかも印象的なものは全部詰め込んでしまおうとするもんだから無理が生じて、非常に内容の薄いものになってしまうのは、いつものことだ。また、そのために、あの話とこの話がくっついて、順番が逆になって、と、中途半端な「原作」なのではあるが、本作では、それがそこそこうまく機能しており(たしかに母親をAが乗っ取るというのは、やりすぎの気もするのだが)”わけがわからない”とか”唐突すぎる”とか”話がよくわからない”ということはなく、この”異様な世界観”をうまく映像化できているように思った。
ちゃっちいCGの白組も、なかなか真っ当なCGではないかと思ったら、これは、モーションキャプチャの技法を導入したからだそうで、今まで全部手書きCADだったんだと驚いたりもした。
物語の最後、母親を乗っ取ったパラサイトAとシンイチの戦いで終わるのが、えらく中途半端だと思ったら、続編があるそうで、今年のGW公開だそうな。
先に母親との対決をしてしまったので、はたして続編での田宮良子のくだりが意味があるのかどうかはなぞだが、浅野忠信演じる後藤とのバトルがあるので、そこそこ面白くはなるのだろう。
原作では、後藤とのバトルシーンは、アクションというよりは理論的な説明が多く、いまひとつリズムが悪かったのだが、山崎監督はどう調理するのか興味が尽きない。
まさか、そののらりくらりしたアクションも原作ダイジェストだったりして。
いずれにしても、「ああ、良い日本映画を見た」気分であったりした。