「遠くへ行きたい」 #地元発見伝
「遠くへ行きたい」 #地元発見伝
志賀町, 石川県県道49号線
地元の魅力を発見しよう!特別企画「地元発見伝」
お題は「地元発見伝」だけど、いままで一番遠くに行ったのはどうのこうのと、なんというか矛盾に満ちあふれたお題で、メビウスの輪のようだが、とりあえず「やせの断崖」という断崖絶壁について書いてみたい。
「やせの断崖」は写真をクリックするとわかる通り、志賀原発のわりとすぐ近く、能登半島国定公園の景勝地「能登金剛」にある標高35m~55mの絶壁である。非常に交通の便が悪く、福井県の東尋坊のように、カンタンに到達することは難しく、ある意味、秘境のようなところだ。
「やせ」というのは、断崖(がけ)の上から日本海を見下ろすと"身がやせる思いがする”からだそうで、なんとも安直なネーミングだが、実際に見下ろしてみると、いやまったくほんとに恐怖のるつぼ。血も凍る思いがするほど強烈だ。いわゆる「外海」で年中、日本海の潮が打ち付けられ、なおかつ強風が常に吹き付けているようなところなので、その気がなくとも、風にあおられ落ちてしまいそうになる。
そのうえ、ここまで危険極まりない断崖絶壁なのに、どういうわけか、手すりも柵もなく2008年頃までは「立入禁止」となっていたりもする。立入禁止なのだけども「やせの断崖→」とカンバンがあったのは、親切なのか不親切なのか、罠なのか、よくわからない。筆者も、その崖下をのぞきこんでカメラで撮影してみたが、もともと高所恐怖症なので、おそろしいのなんの。地面に這いつくばっての撮影であった。
この写真は2007年に撮影したものであるが(突っ込まないように)、2007年は、能登震災のあった年である。非常に大きな激甚災害で、”いまにも崩れそうな断崖”も、やっぱり10mほど崩れてしまったようで、かつての面影は失われつつある。とはいうものの、やはり断崖絶壁は断崖絶壁なので、非常に恐ろしい場所であることには、かわりがない。
「高い」以外に強風もあり、立っていられない、足がすくむ、ことうけあいだ。
そして、このような場所であるがゆえに、以下のような立てカンバンも多数。
松本清張の推理小説「ゼロの焦点」でヒロインが最後に身を投じたのは、この「やせの断崖」。すくなくとも判明しているだけで18人の自殺者が出たという。
奇岩・奇勝だらけの能登金剛。石川県能登半島には、自然の美しさと恐怖が満ちあふれている。「人類は自然を克服した。克服できる」というのが単なる思い上がり以外のなにものでもないと、畏怖の念を抱かずにはいられない場所だ。