★ The Tsuchinoko News 2 (つちのこ通信2) ★

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【映画】ストリート・オブ・ファイヤー

80年代、MTVが黒船のごとく来日したのと合わせたように、やたらと”音楽もの”の映画が製作された。”音楽もの”と言っても、ミュージカルやオペラとは異なる70年代後期のサタデー・ナイト・フィーバーのようなディスコやロックといった若者文化を題材にしたもので、”音楽”と”恋愛”、”若さ”を主題に据えた作品群で、ちょうど筆者の「若気の至り」時代と合致することもあり、すっかりハマった(笑)
ストリート・オブ・ファイヤーは、その中の1本。
予告編を見たときに「無茶苦茶な・・」「暴力」そうした印象が強く誘惑にかれつつも「不良」を避ける偽善的善良市民を装っていた筆者などは、なかなか劇場に足を運ぶことができずにいた(といいつつ深夜の映画館に居座り朝まで徹夜で映画館というような筆者であったが(笑))で。結局劇場に足を運んだ。

大人気歌手エレン・エイム(ダイアン・レイン)がリッチモンドの街に慈善興行でやってくる。街中がエレンの歌を聴こうと会場にやってくる。公演が盛り上がり最高潮に達した時、黒い皮ジャンに身を包む暴走族ボンバーズがエレンを拉致していった。
そこに2年前街を去った不良のトム・コーディ(マイケル・パレ)が帰ってくる。
居酒屋で知り合った戦争帰りの女兵士マッコイ(エイミー・マディガン)と、エレンの恋人でありマネージャーのビリー・フィッシュ(リック・モラニス)の3人は、ボンバーズの巣くうバテリー地区に潜入し、エレンを救出する。
炎に包まれ銃声響くバテリー地区。ボンバーズのリーダー・レイヴン(ウイレム・デフォー)はトム・コーディに復讐を誓う。

実はエレンとトムは昔の恋人通し。歌手デビューに憧れるエレンはトムを捨ててビリーとステージを選んだと、トムは勝手に想像しエレンと街を捨てて出て行った。エレンはそのことを、自分は捨てられたと感じビリーとステージに走った。久しく再会した二人は、誤解をとき再び愛を確かめ合う。

その頃レイヴンは、トムと対決し決着をつけると果たし状を突きつける。
ロックの鳴り響く場末の街で、レイヴンとトムの一騎打ちが始まった。

西部劇そのままのストーリーを、ロック(といっても、非常に80年代テイストなアレンジのされたロック)ミュージックをバックに焼き直したという感じの作品で、非常にわかりやすい。単純だとも言えるがリズミカルなテンポのよい暴力シーン(アクションともいう)と、映画作品をPVとしたような音楽構成が非常に良く良質のアクション映画として仕上がっている。
ものすごく暴力的なのに、なぜか人が一人も死なないところが健全すぎてアンバランスになったのか、興行的には失敗し、もともとあった「トム・コーディ三部作」はご破算、これ1本のみとなってしまった。

日本では作品よりも劇中歌の日本語版がヒットした(椎名恵の「今夜はエンジェル」邦題のセンスが意味不明だ(笑))それはそうと、非常に不思議なアレンジで、劇中その「今夜はエンジェル」と「NOWHERE FAST」を歌うダイアン・レインは歌を歌えない女優なので、ファイヤー・インクという覆面バンドが演奏をしている。これを口パクでダイアンレインが熱唱し、バッグバンドが演奏したふりをする構成なのだが、ドラムは生ではなくシモンズ(当時はやった電子ドラム)、歌はなぜか4人でユニゾン、画面と音楽の差が大きい。それでも映像の方と音楽をピッタリ合わせているので違和感がないのがものすごく不思議だったが、今見てもやはり違和感がなくたいそう不思議だ。
ドゥーワップを披露するソレルズの方も、やはり口パクで、こういうことが映画の興行失敗につながったのかも知れない。

筆者的には、かっこいい主人公よりも、レイヴンという悪役のインパクト(顔がものすごく怖い(笑))がすごかったが、前述したように演じるはウィレムデフォー。名脇役として現在も健在だ。あまり悪役で登場することがなかったのだが、スパイダーマン(サムライミ監督版)のグリーンゴブリンとして登場した時は、筆者は興奮気味だったが、グリーンゴブリンには、本作のレイヴンのような怖さはなかった。残念だ(笑)

監督はウォルターヒル。
製作はローレンスゴードンと、後の暴力的なアクション映画で名を馳せる(笑)ジョエルシルバー。ジョエルシルバーは、ウォルターヒル監督作品の製作で成功し出世していくのであった。