★ The Tsuchinoko News 2 (つちのこ通信2) ★

重要な話から、どうでもいいことまで。ほとんど役に立たないことを書き連ねています。

【映画】クライングゲーム

IRA暫定軍のメンバーらは、捕虜となった同志と人質交換をするために、ジョディというイギリス軍兵士を誘拐・監禁していた。IRA暫定軍のメンバーで見張り役のファーガスは、ジョディと次第に仲が良くなっていったが、人質交換に失敗し「ジョディを殺せ」と命令を受ける。ジョディは、ロンドンにいる恋人ディルに「愛していた、と伝えてくれ」と頼む。ジョディを処刑する朝、IRA暫定軍のアジトはイギリス軍によって破壊される。そのとき走ってきた戦車にひき殺されジョディも死んだ。命からがら逃げ出したファーガスは、しばらく身を隠したいと、ロンドンに旅だった。

ふと思い出しジョディの恋人ディルを探し見つけ出すファーガス。ファーガスとディルは次第に接近し、ついには一夜を共にすることになった。しかし全裸になったディルを見て驚くファーガス。ディルは男性だったのだ。

その頃、ファーガスと一緒にいたIRA暫定軍の仲間、生き残りが現れ、要人殺害に協力するよう命令する。逆らえばディルの命はない、と。否応なくファーガスは、要人殺害計画に組み込まれたが、その決行日、ディルはファーガスをベッドに縛り付け身動きが出来ないようにしてしまった。
慌てるファーガスだったが、時間になっても現れないファーガスにあわてるIRA暫定軍の生き残りたち。自ら銃を持ち要人を正面から殺害しようと試みるも、逆に殺されてしまう。
ファーガスは裏切った。ファーガスはドジった、と、ファーガスの前に現れる、もう一人の IRA暫定軍の女性兵士。ディルは、彼女を銃で殺害する。

ファーガスは、ディルの殺人をかばうように現場から逃げろと指示し、身代わりとして逮捕された。

しばらくして刑務所のファーガスに面会にやってきたのはディルだった。

ニールジョーダン監督作のサスペンス。いまでこそIRAの存在は温和になっているが当時はアイルランド紛争が問題となるほど過激な状態だった。当時は性同一性障害という概念もなく、テレビで宴会芸のようなニューハーフが話題になっていたような時代。そんな頃に、IRA暫定軍に身をやつした男と性同一性障害の彼女の恋愛模様を、人が死にまくるサスペンス調の作品として公開された。当然テーマは「生きる」であって、愛だ恋だという話しは出てこない。

作中、冒頭と最後に1つの寓話が語られる。カエルとサソリの話しで、川を渡りたいサソリがカエルくんの背中に乗せてもらおうと交渉する。カエルくんカエルくん、ボクを向こう岸まで背負って泳いでくれよ。カエルは、そんなことをすればサソリくん、君はボクを刺すに決まっているだろう。サソリは、いやいやそうしたらボクもおぼれてしまう。だから刺さない。 カエルはサソリを背中にのせて泳ぐのだが、サソリはカエルを突き刺した。沈みながら、カエルはサソリくん、なぜ刺したんだと問う。サソリは、言う。「それがボクの性なんだ」。劇中の登場人物は、みな、自らの性を背負い込み、性に翻弄される。そして性に抗い苦闘する。

妙に文学的な脚本は、しっかりアカデミー賞をとったりしており、主演者もノミネートされている。ディルというキャラクターゆえなのか、主題曲「クライングゲーム」は、カルチャークラブだったりして、なんともなんとも80年代の香りが漂う逸品でもある。必見。