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★ The Tsuchinoko News 2 (つちのこ通信2) ★

重要な話から、どうでもいいことまで。ほとんど役に立たないことを書き連ねています。

【映画】ブラックスワン

ナタリーポートマン演じるバレリーナのニナが、ある日突然プリマ(主役)に抜擢され、そのプレッシャーから次第に気が触れていく様を描くサイコサスペンスである。

振り付け師のヴァンサンカッセルは、それまで劇団のプリマだったウィノナ・ライダーをあっさり主役から引きづりおろし引退させる。そして新作の「白鳥の湖」のプリマにナタリー・ポートマンを抜擢。
純真で臆病な「白鳥(ホワイトスワン)」と官能的で自由奔放な「ブラックスワン」を一人のプリマが踊り分けるという斬新な試みであった。
ナタリー・ポートマンは、純真で臆病な方は完璧に踊りこなすことができたが、ブラックスワンの方になるとサッパリで、”不感症の踊り”だと評される。
はじめてのプリマ。相反する二面性のある踊り分け。その緊張のさなか、元バレリーナで今はすっかりステージママな母親の嫉妬と、同僚であり代役であるリリーが自分を陥れ役を奪うのではないかという恐怖。

次第に気がふれていく。

最後は自分の腹を自分で刺して血の海の中で「完璧」と満足げな笑みを浮かべ・・・

本作の見所はなんといっても「気が触れていくナタリー・ポートマン」で、ストーリーだけなら平凡、スプラッターな描写も大甘、非常にありきたりの作品のような気がするのに、たった一人の人間が精神的に追い詰められ、特殊な意味でサクセスしていくところだ。
この作風は、監督のダーレン・アレノフスキーの前作「レスラー」にも通じる。あちらも、ミッキーロークあっての特殊なサクセスもので、もし、主人公に共感するなり見守るなりの感情移入がなければ非常につまらない作品でもある。

その点で、本作は成功している。
しっかりアカデミー賞の主演女優賞をとっていたりする。
(他にも多数の賞にノミネートされ、受賞している)


個人的に、ビョートル・チャイコフスキーも大好物なのだが、しかしながら、この「ブラックスワン」はイマイチ好感を持てない。幻想オチ、狂気は、場当たり的に見ればおもしろいのだが、いつも最後に「もうちょっと合理的なオチにならないものか」と感じてしまうことによる。
つまり、なぜ気がふれていくのか。
途中、麻薬と性交にふける場面もあるのに、なぜそこに墜ちないのか。

ステージママの悪意の嫉妬。突如引退を告げられた元プリマの嫉妬。
不感症とまで(叱咤激励の意味とはいえ)言われたニナの哀しみや怒りや悩み。

そうした部分がどうも不明瞭。

必然的に、ニナを取り巻く人間関係が非常に希薄で、ニナがいったい何に追い詰められているのかがよくわからない。もちろん、ニナ自身が緊張し、と言えばそうなのだが、野心的であるはずのニナは、結局最後まで野心的には見えないまま。

実はニナの中にも「ブラックスワン」は居る。

この部分がちゃんと描けていなかったせいか、ラストのステージでの「ニナのブラックスワン」で拍手喝采になったのがとても不自然に見えてしまった。
もちろん、そのあとに「完璧に踊りきった」というのも、なんとも信じがたい。

繰り返して見る気がしないのは、そうしたところに理由があるのかも知れない。