★ The Tsuchinoko News 2 (つちのこ通信2) ★

重要な話から、どうでもいいことまで。ほとんど役に立たないことを書き連ねています。

【映画】ゴルゴ13

80年代前半。CGの黎明期において現在では考えられないほどチープなドット絵とアニメーションを合体させた非常にあやしい「世界で初めてコンピューターグラッフィクスを使ったアニメ」。それが劇場版のゴルゴ13である。いくつかのマンガ原作のプロットを織り交ぜたオリジナルストーリーで、アニメでありながら、血みどろの描写、思いっきりな性描写のある「大人のアニメ」でもある。

ゴルゴ13は一流のスナイパーで寡黙でマシンのように任務を遂行しスイス銀行への振り込みで仕事を請け負う世界的犯罪者だが、同時に、時事ネタのなかで暗躍する人物でもある。
そのキャラクター、デューク東郷そのものに魅力があるキャラものではなく、話しが時事ネタで、何十年も連載をしてきたマンガ作品だ。

ところが、劇場版の本作では、さほど時事ネタが強調されない。
ありそうな時事っぽさはあるものの、83年に起こりそうな(たとえば、ありきたりだが冷戦など)も出てこない。やれマフィヤだギャングだ、そして警察 vs ゴルゴといった風で、どうも釈然としない。
監督はスペースコブラやあしたのジョーでお馴染みの出崎統だが、その監督が、そもそもゴルゴ13という人物に全く感情移入できなかったそうで、淡々と話しが勝手に進んでいくような出来となってしまった。

時事ネタのないゴルゴ13は、ただのスナイパーアクションであるが、なにしろあのデューク東郷なので、能面のまま薄く開いた目のまま、一瞬で敵を倒す。素手で。
銃もなにしろスナイパーなもので、激しい銃撃戦でゴルゴが瀕死の重傷を負うようなこともない。見事な。あまりに見事な任務遂行で、こう、なんといったらいいか、カタルシスに欠ける。
緊張感も、たぶん、あるんだろうけど、デューク東郷が作戦をミスしないという安心感で、緊張感なし。

さらに、挑戦的なのはけっこうだが、ドット絵なCG。ぎこちない動きのCG。当時コンピューターの世界で流行ったというか話題になった LINKS-1 という並列型コンピューターと メタボールが、作品の緊張感をさらに削ぐ。CGそのものの出来不出来もあるのだが、それ以上に非常に使い方がまずく、ますます本作を「世界で初めてコンピューターグラッフィクスを使ったアニメ」とだけ言わしめてしまう結果になっている。

作中、コンピューターの画面などたくさん出てくるので、そこに使った方がよかったのではないか。なにもヘリとして登場させることはなかったのではないか。手書きの絵の方が精巧な銃や弾丸をCGでやる必要性はなかったのではないか、と、演出面の不備が目立つ。

主題歌も風呂場エコーで、どうにもこうにも作品を軽くしてしまい、ますます・・・

と、さんざんな作品になってしまった。
古い千葉真一主演の実写版があり、「こんなのゴルゴじゃねぇ」なのだが、まだ映画としてはこちらのほうがよく出来ている。


それにしても、ゴルゴ13のことしめす暗号名「G(じー)」。
アニメで声優がハッキリと言い、音として聞こえると「爺」に聞こえてしまい(筆者だけだと思うが)、どうも拍子抜けしてしまい・・・・ etc etc