【音楽】姫神
テクノといえばピコピコ。それがある程度熟成されてくると、アンビエントな方向でのシンセサイザーの活用が興り、いわゆるニューエイジと呼ばれる音楽シーンを形成していったのは、これまたやはり80年代。
岩手県にそびえたつ姫神山の名称を冠した 星吉昭こと「姫神」はけっこう愛聴板が多い。すっかり忘れていたのだが、押し入れのCDを整理していたら、たくさん出てきた「姫神」のCD。もちろん初代姫神のものだ。
日本の原風景を表現した、ということで、落ち着いた静かな曲が多いのかといえばそうでもなく、ゲートエコーの効いたビート感あふれる今で言うならヒップポップ然とした躍動感あるものが多い。
特筆すべきは、20世紀も終わろうという頃に発表された「縄文海流〜風の縄文Ⅲ」その歌詞で”縄文語”で書かれたとされているもの。人類学者・言語学者の崎山理名誉教授の指導により”創られた”そのナゾの歌詞は、その後の”姫神”作品に、ちょこちょこ登場することになる。はじめて耳にした時の筆者のインパクトは相当なものだった。
アパ ナア ガ マポ
アニ ノノトアヤトイネトイエト
オト シブ イブム
なにを言ってるのかさっぱりわからない。
P-MODEL平沢進の歌詞も何を言ってるか全然わからないが、こちらもわからない。ただ”縄文語”だそうな。(アイヌ語であるとも、ポリネシア語であるとも言われる)
そういうスタンスから言うと、姫神のいう「日本の原風景」とは、いま現在の日本という国や日本人と名乗る人々のことではなく、すでに失われた日本という存在しないものを歌っているのかも知れない。民謡でもなく演歌でもなくテクノで、ヒップポップな存在しない日本を表現し続けた姫神に、「ありえない日本」をまた別の形で表現していたYMOの姿が重なるのは筆者だけだろうか。
古き良き時代と当時=バブルにしがみつき、そのまま立ち直れない日本をはたして姫神はどう思っていることだろう。