★ The Tsuchinoko News 2 (つちのこ通信2) ★

重要な話から、どうでもいいことまで。ほとんど役に立たないことを書き連ねています。

【映画】時計じかけのオレンジ

f:id:tsuchinoko118:20120706165746j:image:left:w260夜な夜な暴力とセックスに明け暮れる不良少年のアレックスは、ある日仲間の”ドルーグ”にハメられ、作家の妻を”トルチョック”したことで警察に逮捕され14年の刑を受ける。模範囚を装い2年ほど経過したとき「ルドヴィコ療法」という暴力が大嫌いになる治療を受けることになり、治療は成功する。彼は暴力やセックスを考えるだけでも、ひどい吐き気に見舞われ、何もできなくなってしまう体質になったのだ。
洗脳による更正を終えたアレックスは出所するが、自宅は下宿人に貸し出され自分の部屋もない。寂しくさまようアレックスだったが、過去の暴力の被害者たちに取り囲まれ殴る蹴るの暴力を受け、昔の裏切った仲間にも半殺しにされる。助けて下さいと、たどりついた一軒の家。親切な介抱を受けるが、アレックスが逮捕されるきっかけとなった作家の家で、拷問を受けることになる。

全体としては、非常に不法で暴力的である。いわゆる善は一つも出てこないで、終始偽善で話は進む。近未来の荒廃した社会を描いているふりをしながら、実は、非常に普遍的な社会にひそむ病魔をするどく描く風刺作品で、傑作と言わしめるにふさわしい作品だ。

f:id:tsuchinoko118:20120706165745j:image:right:w260とはいえ、この「ちらっとだけ見ると、暴力を肯定した」かのような演出は、現実の世界でも実際に暴力事件を生み出す。
映画のせい、というよりは、そういう社会をそのまま描いたのが本作とも言えよう。


この暴力的なにおいは「ファイトクラブ」や「タクシードライバー」を思い起こさせる。ひどい暴力描写が、えんえんと続きつつ、どこにも善人がいないのに、なぜか説教くさい”善行の勧め”の香りがする。
まだ観てない方は必見。

f:id:tsuchinoko118:20120706165744j:image:left:w260おれさまが思う思う思う、おれさまが考える善悪基準。すなわち自由と権利の濫用がいかに極悪なことか。だから、思うな。考えるな。しかしそれを強制するなら、それはまたそれで極悪だ。
自由と全体主義の矛盾のようなものを見る思いで「べきだ」と他人に向かって言うものではないなぁ、と、改めて知らされる。

筆者的には、全編に流れるクラシックが(正確にいえばアレンジだが)良い。「雨に歌えば」を口ずさみながら、蹴りをいれるシーンもよいが、ベートーヴェンの第九をバックに主人公が苦しむシーンが良い。