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★ The Tsuchinoko News 2 (つちのこ通信2) ★

重要な話から、どうでもいいことまで。ほとんど役に立たないことを書き連ねています。

【映画】その土曜日、7時58分

あんまりオススメしない映画

f:id:tsuchinoko118:20120610171224j:image:left:w240アンディとハンクの兄弟は、とにかく金に困っていた。兄のアンディは、勤務する会社の金を横領しており、近く監査があるため、何とかして埋め合わせなくてならず、弟のハンクは離婚した妻に子供の養育費を払わねばならない。
金の工面に行き詰まった兄アンディは、弟ハンクに、ある計画を持ちかけた。田舎町の宝石店を襲い、宝石を強奪、売りさばいて金にするというのだ。心配する弟に兄はこう説明する。宝石店は親の店だから、大丈夫だ、と。父母の店を襲撃することに躊躇(ちゅうちょ)する弟だったが、金の工面にうまくいかず、あてもなく、背に腹はかえられないと兄の「宝石店強盗」話に乗ることになった。

そして、ついに決行日。その土曜日、7時58分。

さまざまな誤算。事態は裏目、裏目に。

兄と弟の人生は、破滅していく。

破滅のキーワードは、2人の父親。


f:id:tsuchinoko118:20120610171223j:image:right:w300兄弟の宝石店襲撃で予定外の惨事。母親を射殺してしまったことから、その夫であり、2人の父親であるチャールズが、「こんな田舎の小さな宝石店を、いったい誰が襲うのか」と疑念を持ち、警察をよそに自己流の捜査をはじめ、結果的には、自分の息子たちである兄弟の犯行であることを知る。そのときの父親の気持ちと言ったら。
愛する妻を亡くした哀しみに、こんな悪党に育ってしまい、ダメになってしまった兄弟。それを育てた自分。

一流大学を出て立派な会社の重役にまでなった兄アンディよりも、社会的にはダメ人間の弟ハンクのことだけを愛していた自分。
そして、会社の金に手をつけ、親の店を襲撃し、予期せぬこととはいえ母親を殺してしまうことになり、ダメダメ人間になってしまったアンディ。

原題は「Before the Devil Knows You're Dead」(おまえの死を悪魔が知る前に・・アイルランドの慣用句?だそうな)。最終的に、父親の手で殺されることになる兄のことを言っているのだろうか。そして、”悪魔が知る前に”とっとと自分の手で殺し、すべてをご破算にしたかったのだろうか。それは怒りにまかせた暴虐ではあるが、自分の産み出した結果を自分で裁く唯一の方法だと父親は思ったのかも知れない。

兄アンディを殺したあと、どこへともなく去って行く父親。

その後どうなったのかはわからないが、少なくとも、この「家族」が完全崩壊したことだけは間違いがない。

脇役の帝王フィリップ・シーモア・ホフマンが兄アンディを。情けない神経質さが似合うイーサン・ホークが弟ハンクを好演。硬派と名高い社会派監督シドニー・ルメットの骨太な演出で、非常に重厚なクライムサスペンスに仕上がっている。ただ、実験のつもりだったのか、なんだかよくわからないが、タイムテーブルがつぎはぎで(時間軸が一定でない=パルプ・フィクション風の)3〜4度見ないと、何が始まりで、どうなって、結果どうしたのかが、よくわからないところがあり、あえて時間軸を狂わせる意味がよくわからなかった。そのままストレートに描くと、たしかに、ストーリー的には、ありきたりだが、主演の2人の圧倒的な存在感による演技で、十分に見応えのある作品になった気もする。

とはいえ、ずいぶんと練りに練って凝りに凝って製作された力作であることは間違いがない。

f:id:tsuchinoko118:20120610171225j:image:left:w260金と見栄。

それが抑えきれなくなった時、いったいどうすればいいのだろうか。

そもそも、金・見栄という自己中心的な欲望を持たずにいるには、どうすればよいのだろうか。

事件を防ぐ手立てはなかったのだろうか。

実は悪魔は「死ぬ30分前」どころか、産まれた時から、すぐそばに居座って破滅を待っているのかも知れない。

ぜんぜん関係ないのだが本作が STAR CHANNEL (BS有料映画チャンネル)で放映された際、作品冒頭に出てくる「Before the Devil Knows You're Dead」を、そのまま翻訳していた。いや、それは確かにそうなのだけども、タイトルなので「”その土曜日、7時58分”」と翻訳すべきではなかったかと・・・