【映画】パルプフィクション
いわゆるオタク監督として取り上げられることの多いクェンティン・タランティーノ監督の(たぶん)一番著名な作品はこれになるのだろう。
筆者的には、そうした”タレント”然とした人間像よりも、彼の描く「犯罪」と「暴力」と複雑な脚本と、そして、大半の時間が割かれることの多い「どうでもいい話」という作風に惹かれている。
とくに、本作「パルプフィクション」では、1本筋の通った話というのは、ないに等しく、延々と「とあるマフィアと取り巻きの人々」の意味のない話
で埋め尽くされている。
タイトルが示唆するように”パルプ・マガジン”風に、短い(それこそ、どうでもいいような)ストーリーが綴られ、しかも、時間軸が意図的に変更されているため、1シーン・1シーンの無意味さを味わう変な作品だ。
(最後に出てくる「覆面」など、その最たるもので、登場の意味さえ不明瞭だ(笑))
あえて、ここであらすじを書くことも困難な作品だが、個人的には、聖書の1節をとなえて人を殺す殺し屋のジュールスが良い。なぜか前半部分が間違っているような気がするエゼキエル書25章17節をとなえ(殺す前に相手に聞かせ)無慈悲に人を殺す殺し屋でありながら、ちょっとした偶然に神の奇跡を感じるような人物だ。いつも通り、そうして人を殺すのだが、神の臨済を感じ、この稼業=すなわち殺し屋から足を洗うと言い出す。物語の最後にレストランで強盗に出くわし拳銃をつきつけられ、逆にとっちめるあたりで、それまで「考えていたこと」=つまり、冷酷な殺しにふさわしいと思って深く内容を考えずに唱えてきたエゼキエル書25章17節の、内容をよくよく考えると、自分こそ悪党で善人の行く道を邪魔している悪の存在だと悟る。
どうでもいいストーリーの中で、唯一、この人物だけが、いちおうサクセスしているのだ(笑)
しかし、最初から最後まで、わけがわからない話の中の、ひょっとすると最もわけのわからない男のサクセスなので、たぶん賛同し感動するような人はいないだろう(笑)
スターウォーズのメイス・ウィンドウ役で存在感を示したサミュエル・L・ジャクソンが、このわけのわからない男を好演している。
よくよく観ると、ブルース・ウィルス、ジョン・トラボルタ、ユマ・サーマン、ティム・ロス、アマンダ・プラマー、ハーベイ・カイテル、クリストファー・ウォーケン etc と、なにげに出演者が豪華だ。
豪華な俳優陣による、無意味な会話と、わけのわからないストーリー。
とりあえず観ておいて正解ではないかと、なにげにオススメだ。