★ The Tsuchinoko News 2 (つちのこ通信2) ★

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【映画】V・フォー・ベンデッタ

f:id:tsuchinoko118:20120430145855j:image:left:w240「マトリックス」3部作の助監督が監督。「マトリックス」のウォシャウスキー兄弟が脚本。主演の「V」は「マトリックス」のエージェント・スミスを演じたヒューゴ・ウィーヴィング、と、「マトリックス」スタッフが顔を並べる同名マンガを原作とした作品である。

近未来。第三次世界大戦後に米国が崩壊した世界。アダム・サトラーの独裁制全体主義国家と化したイングランド(英国)。
国営放送に勤務するイヴィーは夜間外出禁止令を破っていたところを秘密警察に見つかり強姦されようとするが、そこに現れたガイ・フォークスの仮面をかぶった「V」と名乗る奇妙な男に救われる。

「V」は超過激なアナーキスト(無政府主義者)で、アダム・サトラーに復讐を果たそうとする危険人物だったが、イヴィーは、この男と奇妙な関わりを持つようになっていく。

「V」は国営放送をジャック。11月5日に国会議事堂前に集結し、国家を倒そうと呼びかける。

全体主義国家をデストピアとして描き、そこに出てくるナゾの男「V」が国家転覆を謀る。ヒーローものと言えばヒーローものだが、「マトリックス」のような、エンターティメント・アクションを期待してはいけない。
そもそも、まず、「11月5日」とは何か?
ガイ・フォークス」とは何者か?
日本では馴染みがなく、さっぱりわからない。

f:id:tsuchinoko118:20120430145854j:image:right:w300歴史をひもとくと、あるいは文学から調べると、11月5日、カトリック弾圧の厳しかった17世紀のイングランド(英国)において、国家転覆を謀り、上院議場を爆破しようとしたが、未遂に終わり拷問のあと、首吊り・内臓抉り・四つ裂きの刑という残虐極まりない方法で処刑された男でがガイ・フォークスである。

英国では非常に著名な人物で、11月5日にはガイ・フォークス・ナイトと呼ばれる花火を打ち上げるような祭りが催される。もちろん、当初はガイ・フォークスを偲び、あるいは事件を忘れないように、など、いろいろ重々しい理由があったのだろうが、いまは風化していることは否めない。

それほど伝統的な「敬虔なカトリック教徒」で政府からすれば国王暗殺を試みた大罪人であるが、「自由を求めて戦った英雄」でもある男の仮面をかぶり、国家転覆を企て、11月5日革命を起こすという、本作の主人公「V」は、単なるヒーローというよりは、あるいは、ダークヒーローというよりは、日本でいうなら「現代版スタイリッシュな忠臣蔵」ほど、地味なテーマの創作であり、たぶん、英国人にしかよくわからないかも知れない作品でもある。

f:id:tsuchinoko118:20120430145853j:image:left:w300たしかに「V」のアクションシーンは、マトリックスばりのスタイリッシュなシーンが多い。

しかし、決してそれがメインのアクション映画ではなく、全体主義国家デストピア、と、ガイフォークスを今一度思いだそう、とでも言いたげな政治的な趣きもあり(といっても、深く掘り下げているわけではない)、見た後にスカットする系の作品ではないことは間違いない。

主演のヒューゴ・ウィービングは、ガイ・フォークスの仮面をかぶり続けているので一度も顔を出さないところも、なんとも。
ただし、ヒロイン役のナタリー・ポートマンは、丸坊主にして頑張っている。

ひとことで言えば、英国のテロリストの映画。
万人向けではない。