★ The Tsuchinoko News 2 (つちのこ通信2) ★

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【映画】リベリオン

f:id:tsuchinoko118:20120407105123j:image:left:w240「ユートピア」と聞くと、多くの人が、”のんびりとした明るい理想郷”を想像することだろう。

しかし、古来、実際に描かれてきた「ユートピア」は、こうだ。

住民は、みな白く清潔な衣を着て、財産は私有することはなく、すべて、みなでわかちあう。
必要があれば、共同のものから使い、みな、働く義務をもち、農業にいそしむ。あいた時間は、科学の研究や芸術を行う。

なんだか、みんな、互いに助け合っていそうで、とても幸せそうだ。

しかし、この「ユートピア」が、現実のものとなると所謂社会主義国家だったり共産主義国家だったりする。

そして、みな、現実を知る。

なにしろ私有のものはないので、平等だが、その実、あらゆる自由を制限される。食事、趣味、就寝、起床、あらゆる時間が細かく決められ、絶対、従うことが義務付けられる。なにしろ、私有のものはなく、平等なのだから。着るものも、みな、同じだ。平等なのだから。

それは、現代では、「デストピア」と呼ばれる。

全体主義。自由は全くない管理社会。好き嫌いを考えることさえ禁止され、思想に問題のある者は、すべて社会の敵、おれたちの敵として、阻害し、抹殺されるか、奴隷労働に処せられる。同じ考えだからこその、平等であり、同じ考えだからこその仲間。その仲間と異なるものは、すべて害悪をまき散らす者として阻害・排除する。それは、自分たちのユートピアを守るため。

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本作「リベリオン」は、近未来デストピアを描く一品。

戦争の反省、殺人事件の反省から、感情を抑制する薬を飲むことを義務付けられた近未来。感情的になったものを、次から次に、捕らえ処罰するヒミツ警察が暗躍していた。
感情的というのは、いい音楽を聴いて感動してもならず、欲情してもならず、もちろん怒ってはならず、ワンちゃんを見て可愛いと思ってもならない、ということだ。
しかし、あるとき、ヒミツ警察の1人クリスチャン・ベイルは、ベートーベンの第九を聴いて感動してしまう。

それから、感情を抑える薬は、やめた。

次第に、当局の間の手が迫る。しかし、クリスチャン・ベイルは、その特殊な奥義「ガンカタ」で、管理政府を転覆するのであった。めでたし、めでたし。

これといって特筆するような設定やストーリーはない、ごく普通のありきたりなデストピア転覆もの、だが、「ガンカタ」を用いたアクション部分だけは少々事情が異なる。

作中登場するガンカタは、”ガン(銃)”と、日本の武道にみられる”カタ(形)”を合わせた劇中専用の造語で、格闘技の名称である。

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両手に拳銃を持ち、銃撃戦において、異様なほどに敵に近接し、狙いが定まらない隙に銃を持った拳で殴る、という。もちろん撃ったりもする。通常、銃撃戦といえば、やや離れた場所から撃ち合うものだが、この”ガンカタ”は、相手の吐息が聞こえそうなほどに接近する。あまりに接近すると、銃を構える距離もなく、狙いをつけることができない。その間に殴るのだ。
いままでにない新しいアクション(格闘技)で、作中全編にわたって登場する。かっこいいのか、と聞かれると、どう説明してよいかわからないが、ともかく新しい可能性を秘めた闘技であることには間違いがないだろう(とは言いつつ、その後、”ガンカタ”が登場する作品は観たことがないが(汗))

しかし、”ガンカタ”がなければ、どこにでもありそうな近未来SFで、作品全体としてのメッセージがいったい何なのか疑問符がつく。
とくに演出面では、ありがちすぎて、非常につまらない。

父親を監視する実は反逆者の幼い息子。実はすでに死んでいた支配者(党首)、そして”ガンカタ”など、作り込みようによってはオモシロイ要素満載なのだが。

もったいない作品である。