【映画】じゃりん子チエ 劇場版
たぶん、あたりさわりなく紹介するなら「大阪下町を舞台に繰り広げられるホームコメディ」ということになろうか。
筆者はアニメはほとんど観ないが、この「じゃんりん子チエ」が公開された当時、大阪界隈に在住していたこともあり、非常にハマった記憶がある。
主人公チエは、小学生でありながらもホルモン焼き屋を営む日本で最も進んだ少女。無職でバクチ好きの父親テツと二人暮らしで今日も、たいへんガラの悪い取り巻きの中で日々を営んでいる。
・・・と、さらりと聞くと、お涙ちょうだい的な家庭崩壊物語を連想しそうな設定だが、その内容は、常軌を逸したコメディである。
かなり暴力的で、バクチにケンカ、警察とバトルをするなど平気な不法行為満載の過激な作品で、「ルパン三世」「クレヨンしんちゃん」で名高い「週刊マンガアクション」出身のアニメ映画である。
製作に関わっているのは、いまでいう「ジブリ」の面々で、本作もまさに「ジブリ作品」の1つのはずだ。(たぶん)
本作公開当時、おりしも漫才ブームの頃で、テツに西川のりお(ほーほけきょ)を配し、桂三枝、笑福亭仁鶴、京唄子・鳳啓介、やすし・きよし、、ザ・ぼんち、のりお・よしお、紳助・竜介などを声優として起用、たいへん風変わりなものとなった。
登場人物は、ばりばりの関西弁でまくしたて、吉本新喜劇もまっさおのスラップスティックさ。その中に、ほんの少しだけ、ぐっとくるペーソスが何ともいえない魅力がある。
原作にわりと忠実に単行本で第一巻〜第二巻の後半あたりまでをうまくまとめてある。本作に欠かせないネコキャラの小鉄とアントンJrの出会いあたりまで、おかあはん(ヨシエはん)が帰ってくるあたりまで、ということになる。
当時は、関西=ヨシモトで、東京進出をもくろんでいた頃だったかと思うので、本作も、はたして東京方面ではどうだったのか、全国的にどうだったのかは、よくわからない。いまでこそ、”関西弁”は全国区で、東京生まれの東京育ちの方が、NHK朝の連続テレビドラマ小説の関西弁がウソくさい、と評するような時代だが、本作の当時、これほどコテコテの関西ネタがどこまで通じたのかは疑問だ。
また内容からしても、放送禁止まではならずとも、それほどの要素は非常に多くある。しかし、この過激な不法さがいいのだ。