★ The Tsuchinoko News 2 (つちのこ通信2) ★

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【映画】マルコムX

f:id:tsuchinoko118:20120330133759j:image:left:w220ブラックカルチャーの先導役ともなった作品、と、至るところで紹介されており歯がゆい。

そんな即物的なものではなく、本作は、黒人差別解放のカリスマ的指導者マルコムXの生涯を描いた真面目な社会派作品である。

冒頭、いきなりアメリカの国旗=星条旗に火がつき燃やされる。なんとも過激なオープニングだ。
そして最後、「この地球上で人間として生きる権利を要求する」マルコムのアップ「手段は問わない」。

黒人解放主義どころか、白人迫害主義とも受け取られがちな、数々の暴力的な発言を、織り交ぜながら、アカデミー賞受賞俳優デンゼル・ワシントンが、マルコムXを現代に蘇えらせている。

作品は、かなりの長丁場で、不要とも思えるブラックカルチャーの紹介シーンや、繰り返しマルコムを賛美するだけのシーンも多いが、才人スパイクリーの緩急自在の演出のため、あっという間に見せるパワーをもつ。

父がKKKに殺され、施設に引き取られ、盗みを働き、犯罪に手を染める少年時代から、ブラックモスリムに目覚め、イスラム教団のスポークスマンとして活躍し、その後、独立。13発の銃弾で暗殺されるまで、一気に描いている。

黒人問題に関しては、当の本人でない以上、外からの揶揄でしか近づけないが、世界中にはびこる差別の根幹は、本作で述べられる本質と同じことである。差別をしているものは、理解できない。差別をされているものにしか理解できないのが、差別だ。

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だから「手段を問わない」としたマルコムXは、時として暴力的な扇動家だといわれる。とくに、キング牧師との対比は、避けられない。

作品では、そうではない。あなたはマルコムの笑顔を見たか、と訴えかける。
事実、単なる暴徒が、大勢の人前で暗殺されることはありえない。

愛が既得権者の権利を破壊する。
既得権者は、己の欲のために、抵抗勢力を暗殺するのだ。