【映画】砂の女
安部公房の同名原作を勅使河原監督が忠実に映画化。多数の外国語翻訳版が存在し、世界中で公開された”SF”。
学校の教師を営む男は、昆虫採集に出かけた庄内平野の砂丘で、宿を案内され、とらわれの身となる。そこは、砂のあり地獄ともいうべき場所で、来る日も来る日も、砂をかきださねば、家が砂にのまれる。そして、そこには、一人の女が。。。
理不尽な理由で、とらわれの身となった男は、なんとか、この砂のあり地獄から脱出しようと試みる。「俺には、帰る場所がある!」
しかし、次第に、男は、女と暮らす、この様相にまんざらでもない、と思い始め、最後は、脱出用のハシゴがかけてあるにも関わらず、砂のあり地獄に帰る。。。「まあ、明日にでも、逃げればいいんだ」。。。
あまりに理不尽な設定とストーリーだが、そこは、安部公房。緻密な設定、詳細の説明。かえってリアルに思える。
そして、話は、あくまでも心理描写。男の視点が「自分は、とらわれの身。はやく脱出し、家に帰りたい」という初期心理から、次第に、「あの社会に、いったい何のこだわりがあるのだろうか」と疑問をもち、砂のあり地獄に住み続けることを選ぶまでの変化は、脚本、演出、そして岡田英次の演技。。。まさに、リアルである。
原作では最初に明かされた「男」の名が、映画の最後に「仁木順平」と明かされたとき、生きるとは何か、の、答えを知るのだ。