★ The Tsuchinoko News 2 (つちのこ通信2) ★

重要な話から、どうでもいいことまで。ほとんど役に立たないことを書き連ねています。

【映画】デスノート The Last Name

f:id:tsuchinoko118:20121023162502j:image:left:w260前半公開の半年後に公開された後編であり完結編が「デスノート The Last Name」である。いわゆるパート2な続編ではなく、前後篇あわせて1つなので、キャストもスタッフもそのまんまである。

前作でデスノートという新しい殺人道具を手にし「犯罪者」を次々と殺し、やれ正義だ、やれ新世界だと新興宗教の様相になっていった「キラ」こと夜神月(ヤガミライト)だったが、彼を追う名探偵L(エル)の追跡から逃れるため、犯罪者ではないはずのFBIメンバー、自分の恋人をも殺してしまう。この時点ですでに単なる人殺しに身を堕としているような気もするが、やれ正義だ、やれ新世界だの大義名分があるため、これは保身ではなく新しい平和な世界のためだと言い張っているところが、死ね死ね団っぽい。

ともかく淡々とキラを追うL。どれほど月が自分のアリバイを証拠として提出しても、Lは、「キラは月なのではないか」と執拗に追い続ける。前作では、どちらかというと、都合の悪い人間は殺してしまえ的だった月だが、海砂の登場、リューク・レムといった複数の死神の登場で、「一度デスノートを手放し、あとで全てを回収する」という非常にリスクの高い離れ業で、Lの追跡を逃れようとする。
Lも先手先手で、そうした月の作戦に負けずおとらず、罠をはりまくる。

このあたりの複雑なストーリー展開と頭脳戦は非常におもしろい。

f:id:tsuchinoko118:20121023162519j:image:right:w240しかして、ただの人殺しのキラこと月は、都度都度「勝った」とほくそ笑み、しかし実はLが先回りしていたという展開で徐々に追い詰められ、最後には、その正体がバレてしまう。
キラ対策室の部長であり、月の父でもある総一郎にも、正体がバレ、月は「父さんならわかってくれる」と泣き言を言うも「残念だが、まったく理解できない。おまえは自分勝手だ」と、あっさり否定される。とことんまで追い詰められ、死に神リュークに助けを求める月だったが、こちらもあっさり見捨てられ、その最期は父の胸のなか。

原作とは異なるエンディングということであるが、筆者的にはこちらの方がよろしい。

最期の最期になっても「人殺しは人殺し。正義であっても悪であっても人殺し。そもそも人を殺したから犯罪者で悪なのであれば、正義のためであろうがなかろうが、人を殺した者も犯罪者で悪」という非常に単純なことが理解できないまま死んでしまった月であったりした。

いや違う。自分は正義だ。自分は善人だ。 やつらこそ悪党だ。 死ね。

藤原竜也演じるラストの月は、その論理破綻した殺人行為の自己義認を必死で叫ぶが、それは単に「自分がそう思っているだけ」であって、他人には誰にも理解できない。
自分がそう思う、ことが義なのであれば、殺人犯であろうが、これから殺人犯になるやも知れない予備軍であろうが、そのようなことを1つも思わない人も、すべてが義である。
裁く必要性がない。

自分だけが特別だ。

たしかに「デスノート」を手にし、他人の生殺与奪権をもった月は特別な存在となった。

それはつまり、ひとりよがりのわがままのスタートなのである。


f:id:tsuchinoko118:20121023162537j:image:left:w280もしデスノートではなく、銃であったり、ミサイルであったり、ナイフであったりしても、同じことだったりもする。

非常に荒唐無稽で、かつマンガ然とした映画で、非常に後味の悪いラストだったが、国産も見るに堪える作品がどんどん出てくると、筆者はうれしく思ったりもした。