★ The Tsuchinoko News 2 (つちのこ通信2) ★

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【映画】トロン

f:id:tsuchinoko118:20110919045222j:image:left:w2201982年。世間では E.T.が大流行で遊星からの物体Xが興行的に惨敗していた頃、その裏で、ファンタジーアニメの大御所ディズニーが完成させた世界初の全編CG採用作品「TRON」が公開された。「TRON」といっても坂村健の国産OSや N88-BASICの「TRONコマンド」とは何の関係もない。

天才コンピュータープログラマーのフリン(ジェフ・ブリッジス)は、エンコム社のTVゲーム「宇宙のパラノイド」を完成させるが、同僚のデリンジャー(デビッド・ワーナー)に、データを横取りされてしまう。エンコム社の総合制御システムMCPに記録された”横取りの証拠”を見つけるべく、サーチプログラムクルーを送り込むフリン。
しかし、MCPに、その行く手をはばまれる。ついには、物質変換装置により、フリンは電子プログラムの世界に。そこでは、命を賭けた壮絶な、サバイバル・ビデオ・ゲームの世界が待ち受けていた。

CGがまだまだだったころ、ジャン・ジロー(メビウス)氏とシド・ミード氏のデザインに、光のアートで初のCG映画が登場したが、ワイヤーフレーム&直線ポリゴン&256色、と、かなり、ひよわなCGであることがわかる。また全編CGとはうたいつつも、大半は普通のアニメーションで、CGの無機質で正確無比なものではなかったし、人物に至っては光学合成で奇抜なデザインではあるけども意外に普通の映画作品であったことがわかる。
ストーリーも、しっかりディズニーテイスト、といえば聞こえがよいが、普遍的な勧善懲悪で終わっていて、これといって、目新しいものはない。その構成は、ほぼ「不思議の国のアリス」で、不思議の国ならぬプログラムの電子の世界に迷い込んだ冒険譚であると、とらえると、ますます何も新しいものがないところが見えてしまい、ひどく哀しい。

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とはいえ、当時のコンピューターは、まだまだ「電子計算機」で「マイコン」。「専門家」か「マニア」のものであったことを考えると、”マトリックス”のようにコンピューターの世界観を展開しすぎれば、さっぱり、わからない話にしか、ならなかったのではないかと考えれば、このあたりが限界か、とも思える。
コンピュター・プログラムを、擬人化しレジスタンスVS中央権力を描いた図式(「ビデオゲーム戦士トロン」VS「中央制御装置(MCP)」)は、サイバーパンクとも言えるし、”マトリックス”の原型とも言える。使い物にならないCGを全面的に使って、ディズニーの看板をかかげ、世界ロードショーとも、なれば、これくらい手堅くなければ、仕方なかったのかも知れない。

しかしながら、IDディスクを投げつけて相手を倒す様、ライトサイクルなどなど、その世界観は独特で多くのフォロワーを産み出した。米国ゲームでは「トロン2。0」が発売されるなど、21世紀にはいってもトロン・アーキテクチャは衰えを見せることなくつきすすみ、ついに昨年(2010年)、その正当な続編が製作され公開された。
この手の作品が「リメイク」ではなく「続編」というのはこれまためずらしい話である。

本作「TRON」は、決して「出来のよい、後生に残る作品」というわけでもないが、「後生に、いつまでも影響を与え続けるパイオニア」であることは間違いないだろう。

不思議なレーザー光だらけの美しい映像=80年代が思い描いていた21世紀のデザインのインパクト。
原則的には、サイバーパンクであること。
たしかに、その後、映画化界はCG全盛へと突き進んでいったこと。

作品としてよりも文化的に評価が高い作品である。