★ The Tsuchinoko News 2 (つちのこ通信2) ★

重要な話から、どうでもいいことまで。ほとんど役に立たないことを書き連ねています。

【音楽】アート・オブ・ノイズ

f:id:tsuchinoko118:20110508174646j:image:left:w22080年代のイギリスでのナゾの音楽ムーブメントでは、トレバーホーン率いるZTTレーベルが世間を騒がせていた。特徴的なのは、サンプリング。現在のようにICレコーダーが当たり前のようには存在しなかった頃、ICチップに音を録音、それを再生させるのがサンプリングだが、「サンプル」という呼称のとおり、当時の技術では、非常に短い時間、非常に悪質な音質でしか”録音”できず、単なる「雑音の打楽器」程度の性能であった。
これを、うまく音楽のビートに取り入れたのが、サンプリング・サウンドで、非常に奇怪な特徴的な音楽を作り出すことに成功したのが ZTTレーベルというわけだ。

とりわけ中でも Art Of Noise は、その名のとおり、このサンプリング=雑音をつかった芸術への昇華を目指し(?目指していなかったかも知れないが)、前面に押し出すことで、テクノとも、インダストリアル・ミュージックとも、単なる雑音とも付かないサウンドを次々と繰り出していたりした。

f:id:tsuchinoko118:20110918022850j:image:right:w300筆者が Art of Noise を初めて聴いたのは黎明的にあたる初期作品「Beat Box」の ノイズ・ゲート・エコー・ドラムの「太鼓」の音である。ふつうのドラムのバスなりスネアなりを、やたらとエコー(リバーブ)を効かせてサンプリングし、短く切り取ると(ノイズゲートで切り取るのも可)、爆発しているかのようなノイズ音となる。これを、シーケンサーなどで機械的に、人間が叩けないような正確無比で、かつ、16分音符のバスドラム連打のようなフレーズにするとできあがる。なにしろ、サンプリングの品質も時間も短いので、不自然この上ない。違和感を覚えるとともに、今までに聴いたことのない斬新な印象を持ったものである。

このゲート・ドラムを前面に押し出した、非常にやかましいリズムの上に、とにかくサンプリング音だらけで、細かなリズムや装飾をほどこし、さらに、その上に、主にカバー曲の「美しいメロディ」を乗せれば Art Of Noise だ。

文章で説明すると、漫画・美味しんぼの、究極vs至高の説明のようで、よくわからないが、聴くとすぐわかる。
f:id:tsuchinoko118:20110918022849j:image:left:w220
日本では「Mrマリックのテーマ」として著名な「LEGS」をどうぞ。ハンドパワー!

・・・という音が Art of Noise。他の曲も、ほとんど全部こんな感じだ(笑)

このバンドが少し変わっているのは、音だけではなく、メンバーが、スタジオに閉じこもりがちなエンジニアであったりして、あまり表に出てこないことも特徴の一つであった。
Art of Noise = 騒音芸術 と 工房にこもって「芸術活動」を行っている印象をかもしだしつつ、ありがちなロック・スターやアイドルのような、カメラ目線で演奏をしたりはしない。
もちろん、サンプリング+シーケンサーなので、ライブ感が皆無なのも理由だったかも知れないが、ともかく、ミステリアスなナゾの集団として、奥に引きこもった方がでもあった。

とはいえ、日本にも来日していて、民放の音楽番組で生出演。演奏をしていたりもするので、この「態度」は単に「売り方」としてのプロデュースであって、本当に閉じこもり芸術をやっているわけではないのだろう。なにしろ、製作・販売屋さんがトレバーホーンだったのだから。

f:id:tsuchinoko118:20110918022851j:image:right:w300
映画ドラグネットのタイトル曲も、似たような感じ。

Art of Noise として著名な「ピーターガン」も、似たような感じ。

ほとんど似たような感じの曲が続き、ついには、飽きてしまう(笑)
延々と似たような曲を発表しつづけてきた Art of Noise は、世界的にサンプリングとゲートドラムの影響を蔓延させて、20世紀で活動を終える。およそ17年になるが、似たような曲だけで、17年も持たせたのは奇跡かも知れない。それほどに、インパクトの強い作風だった、ということもある。

それから10年を経過し、いま、あえて聴いてみると、「懐かしい」と同時に「やっぱり、変わってる」という印象がある。

汚らしい雑音だらけの機械ビートの上に、透き通るような美しいメロディをのせた音。

それが Art of Noise であった。

たぶん、一番、ふつうの曲↑(笑)