★ The Tsuchinoko News 2 (つちのこ通信2) ★

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【映画】ハンニバル

f:id:tsuchinoko118:20110906074541j:image:left:w220アンソニーホプキンスの人気キャラクター「ハンニバル・レクター」博士。トマス・ハリスのレクターシリーズ第三弾。小説の発表当時から、その残酷さが話題になった。

映画の方も、前作「羊たちの沈黙」でFBI捜査官クラリスを好演したジョディ・フォスターが、あまりの残酷さ故?降板したり、本作のカタキ役にエキセントリックな演技で名高い俳優ゲイリー・オールドマンが起用されたり、監督はリドリー・スコットと、豪華な話題に事欠かない作品である。

しかも、内容は1作目・2作目と、檻に閉じ込められていたレクター博士は、本作では、表の世界に”自由な身分で”登場。いやおうなしに、期待は高まる一方。

気になるストーリーも、あいかわらず猟奇殺人主体のサスペンス・サイコ・スリラーなのでは、あるが・・・・・


たしかに、表の世界に出たレクターは強い。もちまえの読心術とも言うべき心理分析に、頭脳戦略。緻密な戦略をたて、レクターに復讐をしようとする連中を、いともカンタンに、やっつけてしまう鮮やかさは、見事としか言いようがない。

リドリー・スコットの美しいフィレンツェの映像、大配給会社さまが金に糸目をつけずに作り上げた、脳みそ料理シーン、内蔵ドバドバシーンは、特筆に価する。正直言って、A級監督に、A級会社が、ここまで金をつぎこんでB級をやるとは予想していなかった。「綺麗すぎる」という話もあるのだが、それでも、紳士的でズバぬけた洞察力と頭の良さを持ち合わせた殺人鬼ハンニバル・レクターを、最大限にうまく表現できているのは、この「綺麗さ」と「残虐さ」の兼ね合わせである。
f:id:tsuchinoko118:20110906074539j:image:right:w80(非常に小さいサムネイルなのは、あまりにグロイから。注意)

ジョディ・フォスターの後釜、とはいえ、ジュリアンムーアも、ヒロインを好演。ゲイリー・オールドマンも、変なメイクで、車椅子に座ってはいるものの、さすがはエキセントリックで名を馳せた俳優だけのことはある。地味ながらも、あいかわらず絶好調である。

本当に豪華な気合のはいった作品だ。


しかしながら、1作目、2作目の冷徹な狡猾さをもった、悪のスーパーヒーロー(?)レクター博士は、本作には居ない。

f:id:tsuchinoko118:20110906074540j:image:left:w220クラリスに恋文を書き、世界の裏側から危険を冒してまで会いに行き、助け、自分の左腕を切断してまでも彼女に傷をつけず、愛していると語り、幼い子供と無邪気に会話する。この形容しがたい物足りなさは、なんとも勿体ない。
(見よ。クラリスを抱きかかえ助けるシーンだ!)

死に追いやってしまうほど冷酷に心理分析をし、殺人をなんとも思わない、人食いレクターは、本作では、まるで、別人。愛を知ってしまったかのようである。


そう、原作者トマス・ハリスは、前作「羊たちの沈黙」のヒロイン”クラリス”に恋をしてしまったのだ。そして、本作は、レクター博士を描くのではなく、クラリスへの恋文を、作品として発表してしまったのだ。

そして、それが、そのまま映画化されてしまったのだ。

いかに豪華で、よく出来た映画であるとは言え、他人のオナニーとも言うべき、ラブレターを、これみよがしに、見せ付けられては、閉口せざるを得ない。

ただ、愛の映画であるが故、その美しさは際立っている。サスペンス・サイコ・ホラーとは言い難いのかも知れないのが本作だ。

はたして、レクター・シリーズの最終章として本作は、ふさわしいのであろうか。なぞだ。