【音楽】ハワード・ジョーンズ
シンセサイザーとリズムマシン、シーケンサーがずいぶんと発展し、タンスと呼ばれたモジュールを手動でマニュピレートしなくても、カラオケよろしく自動演奏が行えるようになってくると、「バンド」というビジュアル面を捨てて「たった一人」で自動演奏を前にパフォーマンスを繰り広げることが可能になってくる。
ちょうどデュランxデュラン、カルチャークラブ、ワムなどと同期の第2次ブリティッシュ・イヴェイジョンと呼ばれる頃、ハワード・ジョーンズもその潮流に乗って、自動演奏カラオケを前に歌うライオン頭のイケ面として日米でも好評を博した。
今、聴けば、シンセサイザーにプリセットの「ブラス1」みたいなデジタルシンセ丸出しの音なのに、当時は、そのブラス・アレンジに騙されて、あたかも本当のファンキーテクノかと見まがうほどであったことが印象的であった。
手法はテクノなのだが、楽曲は、テクノ臭さが皆無で、現代風のポップな楽曲が多い。あくまでも手法としてのテクノであって、テクノそのものではないところが、日本のテクノ歌謡に通じるところのあるハワード・ジョーンズの作品は「ニューソング」を皮切りに「ワッツイズラブ」「かくれんぼ」「パールと貝殻」と次々とヒットを飛ばし、1枚目のアルバム、2枚目のアルバムともに大人気を博した。
3枚目あたりから、テクノな要素が減ってしまい、普通のロックになってしまった感があり、筆者などは「なんだテクノじゃないじゃんか」と脱・ハワードジョーンズ宣言をしてみたりしていたが、世界的にもそうだったようで、急に売上が落ち込み、ハワード・ジョーンズの評価が下がっていくことになる。
このことに気を落としたハワード・ジョーンズは、改宗して創価学会に入信したということらしいが、実際にはよく知らない。
筆者的には、やはり1枚目、2枚目あたりがハワードジョーンズだと思っているのだが、中でも、突然高音の裏声になるおなじみの歌い方が目立ち、ブラスセクションのアレンジが秀逸な「パールと貝殻」あたりがお気に入りだったりする。
いまもコンスタントに新曲を発表しているハワード・ジョーンズだが、ベスト盤の中以外には、昔のテクノポップな面影はないのが残念だ。