★ The Tsuchinoko News 2 (つちのこ通信2) ★

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【映画】ブレス・ザ・チャイルド

f:id:tsuchinoko118:20110804060416j:image:left:w220復活祭を目前に控えたニューヨーク。12月16日産まれの6歳児ばかりを狙った連続誘拐殺人事件が続いていた。
独身のバツイチ看護師マギーのもとに突然妹があらわれ生まれたばかりの赤ん坊コーディを置き去りにしていったのは、ちょうど6年前。コーディもまた、12月16日産まれだった。

と、「12月16日の6歳児」をキーワードにした、サスペンススリラーの様相を呈しながらも、実は、悪魔ものオカルトサスペンスである。

では、オーメンやエクソシストのような「悪魔」のパワーが、登場人物を恐怖のどん底に陥れるのかといえば、あやしい新興宗教セミナーのオッさんが、まじないで、ホームレスを焼き殺そうとするだけ。灯油をひっかぶってマッチで自殺するよう誘導するだけだ。そこで祝福された子供=コーディが、な、なんと、祈りや念力ではなく、ふっとマッチの火を吹いて消す。どこにも神の御業はない。しかしながら聖書では、イエス・キリストが悪魔にタメされるくだりで「汝、神を試みてはならない」という説話があり、悪魔の誘う罠・誘惑には、神の祝福や恵みでは応えないのが流儀。この点で非常に良心的な演出・脚本だ。

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なにしろ、この祝福された子供=コーディは、生命を復活させることができるのだから。それに比べると、悪魔信仰者である新興宗教セミナーのオっさんの行動からは、いまひとつ壮大な「悪魔」っぽい演出が見受けられない。先のホームレスのほかにも、コーディをビルの上から突き落とそうとしたり、銃の弾丸をこっそり抜いたり・・・大したことはしていないし、できない。しかし、ここにも、この地は悪魔が支配する、金と権力と、そして神から離れて何でも自由だ、という聖書的な悪魔の目的と活動がしっかり描かれている。とても良心的だ。良心的すぎて、はたして本当にオカルトホラーと言ってしまっていいのかナゾだが、ともかく、ちょこちょこ神の御使いらしき現れてはすぐ消える人物も出てくるので、かなり聖書に準じて物語は書かれているようだ。

バチカンを追放された元神父を演じるイアン・ホルムが、悪魔について、わかりやすく説いているシーンが印象的。「神なんかいない。だから自由だ」それを危険なメッセージだとしている点も興味深い。

どうにも乳臭くて好きになれないキム・ベイシンガー演じる主人公の大根役者ぶりが、映画的には魅力を半減させているが、この作品性なら、神の栄光と人間の愚かさ弱さを表現するにはちょうどよい。

ベイル・オーガナ議員・・・否、FBIのジミースミッツ刑事と、首を切り下ろされるためだけに登場するクリスティーナ・リッチーが、本作は間違いなくオカルトホラーだと証明している。

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映画という作品生で考えた場合は、CGで描かれた、プロテスタント風サタンが、フォークを持って空を飛び回り、襲っても来ない中、だらだらと話がすすみ時間だけが過ぎていくところは、よくできた火曜サスペンス劇場程度ではある。

とはいえ、カウチで、だらだらと見ていられて何度観てもあきないところは、評価が高い。
オカルトホラーにおいて、悪魔の恐怖よりも、神の栄光と祝福を描いた珍しい「逆オーメン」なのだろう。