【音楽】鈴木さえ子
「すぐおいしい♪ すごくおいしい♪」 チキンラーメンのCMソング。
商品開発の妙ということで、自社製品の掘り起こし、再プロデュースでの成功例としてはもちろん、なにげに鼻歌で出てくる長年のヒット作(オリコンや何かのベストテンで評価されたことはない)日清食品の「チキンラーメン」。
ふと思い出す「すぐおいしい♪ すごくおいしい♪」のCMフレーズで、「そういえば、この曲(歌)の作曲は、鈴木さえ子さんなんだよね〜」と、長年、ふと想い出すナンバー1、鈴木さえ子。とつぜん、想い出す鈴木さえ子。
1980年代、バブルにうかれ、ハイエナジー・ユーロビートがクラブやディスコで持てはやされた裏で、黒ずくめに、テクノカットのニューウェイブが、地味に流行っていた時期。鈴木さえ子は、そんな中、YMOがらみ+ムーンライダース鈴木慶一がらみで、突然わ
いて出てきた、不可思議なミュージシャンである。
日本のクリスマスソングといえば山下達郎の「クリスマス・イヴ」だが、ある特定の世代は、「I Wish It Could Be CHIRISTMAS Everyday」といえば、一度や二度は、耳にしたことがあるはず。
「I Wish It Could Be CHIRISTMAS Everyday」こそは、そのチキンラーメンCMの作曲者鈴木さえ子のデビュー曲だったりする。
ふわふわしてて、日常の隙間にふっとあらわれる四次元空間のようで、ノスタルジック。まわるロンドのようなリズムをベースに、テンションコード使いまくり、強烈な打撃音を前面に出して、ヘタウマの鼻声で歌うポップ。いま、聴いても、ずいぶん新しい。それほどに、独特の世界観なのだろう。
当のご本人は「ロック印象派」と銘打っていたが、意味はさっぱりわからない。「I Wish ・・・」以降何かとテレビCMや番組とコラボレーションも多く「恋する惑星」あたりは、知ってる人は知っているかも知れないぐらいには、ヒットしたかも知れないが、よく知らない。
最近は、セキスイハイムのCMでバスの乗った中年女性を演じ、ヘタウマの鼻歌を歌いつつも、CM曲の大家になりつつあり、ケロロ軍曹の音楽を担当していたりするようだ。あいかわらず、なんだかわからない、不思議な方だったりする。
全体的には、どの楽曲も「打ち込み」だらけで、決してテクノを押し出しているわけではないが、世相を映し出す。リズムボックス+シンセサイザーだらけのバッキングで、犯人は坂本龍一と高橋幸宏、細野晴臣YMO組なのは間違いないとして、そこにムーンライダース組、アルファレコード組が絡んでくる。しかしながら、テクノ系にありがちなキュート・ポップ・攻撃的・ドライブ感は、あえて否定したような牧歌的な音作りは、これまた、今も昔も鈴木さえ子くらいしかいないのだ。
ちゃんとしたアルバムは、デビューアルバム「I Wish It Could Be CHIRISTMAS Everyday」と2作目「科学と神秘」。3作目の「緑の法則」そして12インチ(死語)「ハッピーエンド」・・・と90年あたりまでは、コンスタントに発表してたが、急に活動がなくなり、気がつくと、最新アルバムはケロロ軍曹だという(笑)まったく、わけのわからない方だ。うわさによると最近は「ロック印象派」ではなく「テクノ印象派」とも銘打っているそうな。
筆者のもっともお気に入りの一曲は、筆者のホラー趣味のようなタイトル「血を吸うカメラ」。実際にこういうタイトルのサイコサスペンスがあるが、それとはとくに関係もない鈴木さえ子+ムーンライダース鈴木慶一節全開の名曲である。