★ The Tsuchinoko News 2 (つちのこ通信2) ★

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【映画】エクソシスト〜パズズとは何者か。

エクソシスト」原題は The Exorcist。悪魔祓い師。説明不要のオカルトホラーの金字塔であるが、ある時期のアマゾンのDVDコーナーの解説から引用すると「少女に襲いかかる悪霊と、霊を静めるためにやってきた霊媒師との過酷な闘いを描いた、巨匠ウィリアム・フリードキン監督によるSFホラー大作。」とある。

SFホラー大作!(笑)

筆者も、悪霊(バズズ)という悪役が少女を虜にし、そこに、絶対に勝てそうにないのに挑む正義の神父、という図式の作品だという理解しており、あながち「SFホラー大作」と言えなくもない。

さて、本作で登場する悪霊は、蝿の王ベルゼブブのイメージで描かれる。
旧約聖書で登場する異教の神バアル。異国の民が、嵐と慈雨の神として崇めたその「バアル」を、語呂が似ているとばかりに、ヘブライ語で糞山の王または蝿の王を意味する「ベール・ゼブブ」と呼んだのが、起源とされる説がある。

イエスキリストが登場する新約聖書では、この「ベールゼブブ」は「悪霊のトップ」として登場する。
イエスキリストが悪霊にとりつかれた人を癒し、悪霊を追い出しているのを見た律法学者らが、「イエスは、ベールゼブブ、すなわち悪霊の頭だから、悪霊を追い出せるのだ」と揶揄する。

旧約聖書では、異教の、あるいは他の民族の神であり、嵐と慈雨の神だったベールゼブブは、新約聖書の時代では、すっかり「悪霊」サタンの頭(かしら)として、扱われることになった。

本作、エクソシストで、蝿の王ベルゼブブが、悪霊のイメージとして登場するのは、新約聖書で「悪霊の頭」であるからに違いない。そんじょそこらの雑魚ではなく、頭、最悪・最凶の悪霊だ、ということであろう。

しかし、映像化されたそれでは、ベルゼブブではなく、「パズズ」が登場する。


映画冒頭に「パズズ」の像が登場し、老齢のメリン神父と対峙するシーンがあるし、クライマックスの悪魔祓いの最中にも、光の影が「パズズ」であったりする。

ライオンの頭と腕、ワシの足、4枚の翼、サソリの尾に、やたらと目立つヘビの男根。

強烈なインパクトのその”キメラ”、異形の怪物のように見えるパズズの姿は、「ああ、これが悪霊の頭の姿か」と観る者の心に残るが、これはパズズであって、ベルゼブブではない。

パズズ」は、メソポタミア界隈のアッカドに伝わるバビロニア伝説・伝承の中に登場する風と熱風の魔神であり悪霊である。さらには、悪霊の王であるとされる。
風と熱風が運ぶ熱病もたらす者として、恐れられ、崇拝の対象とされた。
また、この悪霊の力をもってして、悪霊を統べる。ところから、魔除けの護符としても活躍したようだ。

「悪をもって、悪を制す・・・・ 神父様」


本作の冒頭で、博物館の館長かよくわからない現地の人物が、メリン神父に問いかける。
発掘されたのは「パズズ」の像だったので、そうした裏事情により、このような問いかけになったのだろう。

そして、エクソシストで描かれる蝿の王ベルゼブブ、悪霊の頭という設定は、
この「パズズ」と重なる部分があるため、パズズの姿、パズズの名で、新約聖書で「悪霊の頭」とされたベルゼブブを描かれているのではないかと、推察される。


エクソシスト2 では、イナゴ。
エクソシスト3 では、神父の身体にとりつく連続殺人犯で死刑囚の魂。

さまざまな悪霊が描かれるが、決して、最後まで「蝿の王」ベルゼブブは、蝿の姿で登場したことはない。


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