★ The Tsuchinoko News 2 (つちのこ通信2) ★

重要な話から、どうでもいいことまで。ほとんど役に立たないことを書き連ねています。

中小企業のクラウド・コンピューティング

「クラウド」の話題も目白押しのようで、あたかも、未来は必ず「クラウド」であるかのような宣伝文句もある。
そもそも「クラウド」とは何か。日本語では”雲”と直訳される。アプリケーション(ソフト)やサービスを、目の前にある自分のPCではなく、あるいは、自社サーバーではなく、ブラウザなどを使って、インターネットに任せてしまう、というものである。インターネットは、回線さえ繫がっていれば、どのような経路、どのようなサーバーを介して、データがやりとりされているか、目で見てわかるようなものではないことから、よく「雲」=クラウドに、例えられる。
この「クラウド」、最近、よく目にする言葉ではあるが、なにも、新しいものではない。
10〜20年ほど前にも、NC(ネットワークコンピューター)というものが、あった。やはり、全てのアプリやサービスを、ネットに任せてしまおうというもので、”パソコン”というハードウェアには、もはや、ハードディスクなど内蔵する必要はない、と、実際に、(当時、20万円以上していた)パソコンが、NCパソコンとして、5万円で売られ、あるいは、100ドルで、とも言われていた時代があった。近い将来、世界のPCのほとんどは、NCになる、とも、豪語されていたが、今、どうか、というと、そうではない。NCさえ、見かけない。
いや、ASUSの EeePcの初期型などは、かなりNCに近い。(だから、5万円だった(笑))
しかし、NCはNCとして売れることはなく、ハードディスク内臓の「ウルトラモバイルパソコン」、「ネットブック」が売れた。あくまでも、NCではなく、”さらに小さく、さらに安い”ノートパソコンでしかなかった。それほどに、NCは嫌われたわけである。
Java が台等してきた頃も、同じようなことが叫ばれた。もはや、プラットフォーム(OS)の違いによる差はなくなる。近い将来、アプリやサービスは、すべて Javaによってブラウザを介して供給される。
しかし、Javaは一定の普及をしたものの、とくに、叫ばれていたような結果には、なっていない。
その後も、SaaS(software as a service),ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ),SOA(サービス指向アーキテクチャ)など、が登場し、実際にサービスも行われており、「近い将来、すべての・・・・」という”うたい文句”は、健在だが、一向に、そうなっていくような気配さえない。

原因は、さまざまであるが、原因よりも、「そうしなくちゃいけない必要性がない」ところに、わたしは注目している。

たとえば Webメールと、OutLook Express(または Windows Live メール)を比較したとき、後者を使わず、Webメールを使わなくてならない理由があるだろうか?
OutLook ExpressWindows Liveメールを開かずに、あえて、ブラウザを開き、Webメールを使う方は、そう多くいないだろう。
理由は、さまざまだが、少なくとも、ブラウザを介して提供されるサービスでないと、いけない理由がなく、はたまた、正直にいえば、Webメールの方が、「操作がめんどう」「遅い」「セキュリティが不安」など、問題点の方が多いのが現実である。

このような状況で、はたして、「近い将来、SaaSASP (クラウド型サービス)に、なる」のかというと、「ならない」と、わたしは考えている。

とくに中小企業のコンピューティングを取り扱っている つちのこ の場合
「遅い」
「いちいちマウスに持ち替えねばならず、Enter ではなく TAB キーを使う、わずらわしさは、入力作業への影響が甚大」
「大事なデータのバックアップは、どうなるのか?」
「セキュリティは、大丈夫か?」
「それらを、兼ね備えたサービスは、価格面で、結局、自社PCにアプリがあり、自社にサーバーを持ったほうが安くて安心なのではないか」
ということを、参考意見として申し上げている。

ずいぶんとネットの品質も安定してきたが、あくまでも「ベストエフォート」であり、「LANよりも、はるかに切れやすいWANルート」で、クリティカルな仕事をさせるのが、はたして、どうなのか、と言えば、一度に数百台のPCを使う大きな企業は別として、中小企業にとって、「クラウド」が、素晴らしいのかといえば、とても、そうは判断できないのが実情だと思うわけである。